HOME13 原発 |9月の台風15号による日本原子力研究機構(JAEA)の材料試験炉の冷却塔崩壊事故、使用した木材の腐食が原因。10年以上も目視確認しかせず。点検不十分を露呈(RIEF) |

9月の台風15号による日本原子力研究機構(JAEA)の材料試験炉の冷却塔崩壊事故、使用した木材の腐食が原因。10年以上も目視確認しかせず。点検不十分を露呈(RIEF)

2019-12-23 08:28:07

gennen3キャプチャ

  日本原子力研究開発機構(JAEA)は、9月の台風15号の影響で、茨城県大洗町の材料試験炉JMTR(発電容量5万kW)の2次冷却塔が倒壊した主な要因は、冷却塔を支えていた筋交いに使われていた17本の木材のうち、3本が腐食していたため、と発表した。同試験炉は2006年に運転を止めてから稼働しておらず、その後の点検が不十分だった、としている。

 (写真は、台風15号で、ペシャンコになった実験炉の冷却塔設備)

 事故報告書によると、冷却塔を支えるために、柱の間に木材を斜めに交差させていた「筋交い」の部材が腐食していた。JMTRは2006年に運転を停止しており、その後、木材内部への雨水の浸入と乾燥が繰り返され、腐食が進みやすい状態だった、と判断している。http://rief-jp.org/ct13/93761?ctid=76

2次冷却塔のパイプも歪み、破損した
2次冷却塔のパイプも大きく歪み、破損した

 運転停止後、JAEAはJMTRの安全性についての確認は、目視点検以外は行っておらず、木材の腐食等をチェックするために必要な「打音点検」なども行っていなかったという。また設置当初から構造計算書を提出図書に掲げておらず、メーカーからも提供されていなかったため、冷却塔が木材を使った特殊な構造であることについて「十分把握できず、点検に反映されなかった」と結論付けている。

木材の筋交いの腐食部分。目視でもわかりそうなものだが・・
木材の筋交いの腐食部分。目視でもわかりそうなものだが・・

 この指摘通りだと、JAEAは自らが責任を負うJMTRの構造・構造部材等を十分に知らないまま、運営していたことになる。試験炉とはいえ、原子炉を扱う公的機関として、お粗末な体制であり、言い訳であると言わざるを得ない。

 崩壊した冷却塔は、水平荷重(風荷重)である速度圧q=200kgf/m2(最大瞬間風速63m/s相当)に耐えられるように設計されていた。台風15号襲来で9月9日午前6時50分から7時10分までの間、地上高10mで最大瞬間風速30.9m/sの東風、地上高40mで最大瞬間風速44.5m/sの東南東風を観測した。だが、いずれも設計荷重を下回る風速だ。

冷却パイプも見事に折れて破損
冷却パイプも見事に折れて破損

 

  筋交い等の構造部材の点検は、目視による点検だが、破損した場合等は補修、交換をしていたという。木材内部の腐朽を把握する点検は行わなかった理由を報告書は上記のように、「構造計算書がなかった」「メーカーも言ってくれなかった」として、冷却塔が木材を使った特殊構造であるとはわからなかった、としている。

 だが、目視点検で、破損などの修理はしていたことは認めており、部材に木材を使っていることは把握していたことになる。つまり、「マニュアルに記載がなかったから、木材部材であっても、目視以外の点検はしなかった」というほうが正しいのではないか。

完璧に破壊された冷却塔設備
完璧に破壊された冷却塔設備

 JAEAは、核燃料は約100m離れたプールに保管しており、外部に放射性物質は漏れていない、と説明している。「点検・維持管理に不備はあったとしても、放射能漏れはなかったので、いいじゃないか」と居直っているようにも読める。日本の「原子力ムラ」の安全意識は福島事故以降も、大きくは変わっていないことが伝わってくる。

https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p19122002/s02.pdf