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英Climate Bonds Initiative代表のシーン・キドニー氏、ロンドン大学SOASのサステナブルファイナンスセンター教授に就任。この夏「オンライン白熱教室」を展開予定(RIEF)

2020-06-07 16:24:56

Kidney001キャプチャ

 

 英非営利団体のClimate Bonds Initiative(CBI)代表のシーン・キドニー(Sean Kidney)氏が、ロンドン大学SOASのサステナブルファイナンス専門のファカルティであるSOAS Centre for Sustainable Financeの教授に就任した。欧米の大学ではサステナブルファイナンスの専門コースが相次いで設立されており、実務経験豊かなKidney氏が抜擢された形だ。

 

 キドニー氏は、自ら設立したCBIの活動を通じて、グローバルなグリーンボンド市場の発展に貢献してきたことで知られる。英国での活動にとどまらず、EUのサステナブルファイナンス・ハイレベル専門家グループ(HLEG)や中国、インド両国政府の国内委員会等でもアドバイザー等として参画してきた。日本の財務省にもグリーンボンド国債発行等を働きかけてきたほか、日本のサステナブルファイナンス分野に幅広い人脈を持つ。

 

 今回のSOASでの教授就任について、ご本人は「タイトルは『Professor in Practice』で、准教授のようなもの」と説明する。実務家出身の客員教授の感じかもしれない。新型コロナウイルス感染の影響で、SOASの授業もオンラインが中心。この夏に予定する「オンラインサマースクールで、サステナブルファイナンスやグリーンボンドについてZoomで講義をする予定」としている。

 

  「今の仕事から引退の準備に入ったわけではない。やらなければならないことがまだまだ山のようにある。でも、若い人に教えることは刺激になる。SOASのサステナブルファイナンスセンターで学生たちと議論をすることは私にとって魅力的だ」と語っている。歯に衣を着せぬ機関銃のようなトークで、グリーンファイナンスの世界をリードしてきたキドニー氏。SOASの学生たちとの「オンライン白熱教室」の成果が楽しみだ。

 

 SOAS Centre for Sustainable Financeには、キドニー氏のほか、フランスの2°Investing Initiativeの共同設立者のJakob Thomae氏、WWF Asiaのサステナブルファイナンスの責任者であるJeanne Stampe氏も、相次いでこの春にシニアフェローとして籍を置いている。

 

 英国の大学のサステナブルファイナンス分野の開発では、オックスフォード大学やケンブリッジ大学が先行してきた。最近はロンドン大学だけでなく、インペリアルカレッジ等も力を入れて人材確保に動いている。英国だけではない。フランス、ドイツ、オランダ、米国等ではサステナブルファイナンスをコースとして設定する大学は確実に増えている。

 

 日本はどうか。筆者(藤井良広)は、上智大学で環境金融論を専任教授、客員教授を通じて、 年にわたって開講した。だが、その間、同分野に関心を示す研究者はいたが、環境金融・サステナブルファイナンス分野を専門とする研究者に出会ったことはない。今もってサステナブルファイナンスをコースやセンターとする大学は存在しない。彼我の差は大きいと言うしかない。

 

 さて、キドニー教授。長年推進してきたサステナブルファイナンス市場は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を大きく受けた。この春のグリーンボンド発行は急ブレーキがかかってしまった。この点について、キドニー氏に聞いた。

 

 「確かに3月のグリーンボンド発行は極めて低水準だった。しかし、市場の金融機関等からの手応えでは、今年下半期は再び、グリーンボンド等の発行の波が高まると予想している。トランジションボンドについても内部で検討している。それらはグリーンボンド、気候ボンドの一部と理解している。それらの市場は拡大している」。強気の姿勢は変わらない。

                               (藤井良広)

https://www.s oas.ac.uk/news/newsitem147636.html