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環境省の「JCM」専門官 水野勇史さん退官。元コンサルタントの異色のキャリア(RIEF)。

2016-10-18 01:01:14

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 民間のコンサルタントから環境省に転じ、日本が温室効果ガス削減対策で提唱した二国間クレジット(JCM)の定着に奔走してきた環境省の水野勇史さんが、環境省を退官した。

 

  水野さんは、民間のパシフィックコンサルタントで排出権ビジネス等の上級エキスパートとして活躍した。その後、公益財団法人地球環境戦略研究機関((IGES)を経て、2010年に環境省の地球環境局地球環境局市場メカニズム室に転身、国際企画官を務めた。

 

 同ポストでは、京都議定書後の途上国と先進国の協働作業として、日本が提唱してきた二国間クレジット(JCM)交渉をはじめ、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)における国際交渉などの国際関連作業に従事してきた。

 

 パリ協定を採択したCOP21では日本政府代表団での市場メカニズムの主担当交渉官として、合意文書の採択に尽力を発揮した。各国の「CO2マフィア」やNGOらとの交流も深く、「ミスター・ミズノ」への信頼感は厚かった。

 

 JCMは日本が京都議定書後に提案した個別クレジット事業。それに主に従事した水野さんは、国連における各国間の国際交渉よりも、JCMの地道な活動の方に、より手応えを感じたという。「それは日本が直接、相手国と議論を行い、物事を決めていけたから」と振り返る。

 

 二国間交渉は、国連ベースでの交渉より構造は単純だ。しかし、両国とも様々なステークホルダーを抱えるので、簡単には決められない。両国が温暖化対策を前進させる共通の大目的のために、手探りの交渉を続けた。水野さんは「相手国との交渉と、着地点に最大の手応えを感じることができた」と語る。

 

 二国間の協議では、相手国の立場で考えつつも、自国の利益も確保せなければならない。加えてJCMでは、地球全体の利益確保も必要になる。JCMはこの3つをバランスさせて成り立たせる制度である。

 

 水野さんは「私が初めて携わったころは、まだJCMは概念だけで、誰も見たことはなかった。それが今では、制度として確立、すでに動いており、そういう意味では創成期を終え、本格稼働の時期に入ったと思う」と、手応えを語る。手塩にかけたJCMのさらなる発展を後輩に託して、パリ協定の発効を迎えることになる。

 

 退官後、再びIGESに所属し、引き続き、地球温暖化問題に取り組むが、「今後は研究者として、市場メカニズムにも引き続き取り組むほか、透明性やMRVなどのJCMで培った専門性を、市場メカニズム以外にも活かしたい」と抱負を述べる。

 

 オフタイムは、「特に人並み以上に取り組んでいることはない」。映画や音楽鑑賞、散歩、ショッピングなどで、リフレッシュを図るという。