HOME |ESG、サステナブルファイナンス等の土台を作った英国人、テッサ・テナントさん亡くなる(RIEF) |

ESG、サステナブルファイナンス等の土台を作った英国人、テッサ・テナントさん亡くなる(RIEF)

2018-07-10 23:03:20

tessa1キャプチャ

 

 長年、社会的責任投資(SRI)やサステナブルファイナンス分野で活躍してきたテッサ・テナント(Tessa Tennant)さんが7日、亡くなったことがわかった。テッサさんは今年、英政府からOBE(大英帝国四等勲爵士、将校)を授与されたが、3日にエジンバラで開いた授与式には参加せず、静かに同じエジンバラの地で息を引き取ったという。59歳だった。

 

 テッサさんは、現在のESG投資、サステナブルファイナンスなどの土台を築き上げた自他共に認める第一人者だった。1988年に英国のキングスカレッジの「Human Environmental Studies(人間環境学研究)コース」の一期生として世に出た後、学んだことを、ひたすら実践に活かし、広め、深めてきた。http://rief-jp.org/ct4/75727

 

 卒業後、 英シンクタンクのGreen Allianceに入って研究と実践活動を継続するとともに、1988年には、英国で最初のグリーン投資ファンドであるMeriln Ecology Fund (現Jupiter Ecology Fund)を共同創設者として立ち上げた。それ以来、グリーン投資産業の拡大に努めて来た。たとえば、90年代には、英国のSRIファンド等の団体であるUK Social Investment Form(英SIF)の創設に関わり、さらにUNEP(国連環境計画)の保険イニシアティブ(現UNEP FIに統合)にも関与した。

 

 またCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)の共同創設者、アジア・太平洋地域にサステナブルファイナンスを普及させるために設立されたAssociation for Sustainable & Responsible Investment in Asia(ASrIA)の会長等も務めた。グローバルな視点で、各地の活動を統合・組織化し、ESG活動を、30年以上にわたってグローバル規模で実践してきた。

 

 UKSIFやCDP、UNEP FI等の最近の活動が脚光を浴びる状況をみるにつけ、土台を作った人がいたんだ、という思いを新たにする。

 

 テッサさんは自らの最後のブログ(5月3日)で、病状について告白している。ガンだった(以下は彼女のブログから一部を翻訳)。

 

 「ハロー、皆さん。エジンバラのウエスタン・ジェネラル病院で治療を続けて5年になります。通院していましたが、マイルドな痛みを感じるようになったある時、検査をしてもらったところ、ガンが再発していることがわかりました。ショックでした。去年の6月でしたね。ビル(夫)からも、同僚のイアンからも離れて、誰にも言わずに入院しました。だって、まだ元気なのに不必要な関心を引き起こしたくなかったの」

 

 「選択肢を考慮した結果、化学療法やホルモン投与は受けないことにしました。昨年の年末までに、マイルドな痛みはだんだんエスカレートしてきたので、痛みを和らげるためのモルヒネを少しずつ投与されました。効きましたが、消化器官に打撃を受けてしまいました。そのころには、仕事はすべて止めました」

 

 「春の間も、毎日、ベッドの中で眠るのが日常でした。すごくのろのろするようになりました。私じゃないみたい。でも私はすべての人々や息子のユアンと同じく数十億人の中の一人であり、私を支援して励ましてくれる人々に感謝しています」

 

 「手紙をくれた人たちにありがとうと伝えたい。でも日々、病状が悪化するので返事を書けないでいるのが申し訳ないです。このブログを書くことに全エネルギーを捧げています。だから、次のブログを待っていてください」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 私生活では最初の夫のHenry Tennant氏がゲイを告白して、離婚、その後、アメリカ人の建築家のBill Staempfli氏と再婚している。Henry がHIVで死去後、彼の友人のKelvin O’Mard氏とも交友を結び、HIV撲滅の活動にも参加してきた。二人の孫がいる。世界中を駆け巡ったが、故郷のスコットランドを愛し、スコットランドで亡くなった。

https://lifetimeachievement.uk/