HOME2. 保険 |気候変動による自然災害の損害増、過去10年間で保険カバーは約3割だけ。1.7兆㌦が市民社会と公的負担。特に途上国の都市でギャップ大きく。社会インフラの強靭化が焦点に(RIEF) |

気候変動による自然災害の損害増、過去10年間で保険カバーは約3割だけ。1.7兆㌦が市民社会と公的負担。特に途上国の都市でギャップ大きく。社会インフラの強靭化が焦点に(RIEF)

2018-01-06 00:47:12

Climatewiseキャプチャ

 

  気候変動で激化する自然災害による損害額のうち、保険でカバーできたのは過去10年間で約30%でしかないことが、世界の主要保険会社が共同で組織する「Climate Wise」の調査で分かった。差額の1.7兆㌦(総額約192兆円)は市民社会と公的機関の負担となっている。

 

 ClimateWise は、世界の28の主要保険会社が共通の気候変動関連の課題を研究調査するために設立した組織で、英ケンブリッジ大学のサステナビリティ・リーダーシップ研究所が運営している。日本からは東京海上日動が参加している。

 

 その調査によると、1950年以来、グローバルな自然災害の発生数は年間で6倍にも増加しており、損害額は500%増加の年間1700億㌦に達している。被害に対する保険でカバーされた分と、カバーできなかった分とのギャップは、年平均1000億㌦に増えている。

 

 気候変動の激化による災害の頻度の増加、ダメージの増大によって、保険会社は保険料の引き上げを強いられ、その結果、多くの国・地域で効果的な保険の提供ができなくなるところが増えている。特に途上国の都市部ではそのギャップが大きくなっている、と指摘している。

 

 こうした傾向は、単に社会が気候変動のショックを軽減する手段を喪失するだけではない。保険会社にとっても市場シェアを失うリスクを高めることになる。ClimateWiseは加盟保険会社に対して、社会が気候変動に対して一段と物理的な強靭さを高めるよう支援するとともに、各社会の強靭さを中立的に相互評価できるベンチマークを設定することなどを要請している。

 

 ClimateWise のプログラムマネージャーのTom Herbstein氏は「産業界のリーダーは、資本の流れを、これまでのような前例踏襲的な資産の継続に終始するのではなく、気候変動に耐久力のある資産にシフトさせ、強靭性を高める投資に向かうべきだ」と述べている。

 

 また調査は、各保険会社に投資ポートフォリオのために、「レジリエンシー(強靭性)」を測る格付システムの導入や、グリーンボンド市場の支援、強靭性を重視したインフラの普及等を提言している。

https://www.cisl.cam.ac.uk/business-action/sustainable-finance/climatewise/news/2017-set-to-be-among-the-most-expensive-on-record