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日本生命と第一生命、豪州でのインドのアダニ・グループによる石炭採掘プロジェクトへの融資拒否、と報じられる。今年宣言した石炭関連向け投融資停止策を実行か(RIEF)

2018-08-24 00:12:53

ADANI1キャプチャ

 

 インドの新興財閥アダニ・グループが、オーストラリア・クイーンズランド州で計画している「カーマイケル石炭採掘プロジェクト」に対し、日本生命と第一生命が融資を拒否した、と報じられた。2社は今年になって石炭関連事業への融資を原則禁じる方針を打ち出しており、そうした方針を実行する形でもある。同プロジェクトの鉱区が世界遺産のグレートバリアリーフに近いうえ、石炭増産への国際的な批判が高まり、オーストラリア国内でも反対運動がひろがっている。

 

 (写真は、アダニ・グループの石炭採掘事業に抗議行動を展開するオーストラリアの住民たち)

 

 インド現地紙Business Standardが報じた。https://www.business-standard.com/article/companies/adani-s-rail-project-in-australia-could-hinge-on-court-woes-continue-118080801451_1.html

 

   日本生命は、今年7月、内外での新規の石炭火力発電等石炭関連事業への投融資を中止する方針を打ち出した。一方、第一生命保険は5月に、海外の大型事業融資(プロジェクトファイナンス)について、石炭火力発電所の建設に融資しないことを宣言した。

 

 日本の生保大手2社の動きは、地球温暖化を加速する石炭関連事業に対して、加入者の健康管理を重視すべき保険会社が投融資で支援することは、保険会社としてのビジネス上も、企業の使命としても望ましくないとの共通の判断に至ったとみられている。今回のアダニ・グループの大型石炭プロジェクトはまさに、2社の石炭政策転換を示す場になった。

 

adani2キャプチャ

 

  カーマイケル石炭採掘プロジェクトは、豪クイーンゥランド州政府が2016年にアダニ・グループに対して、推定110億㌧の埋蔵量を持つ内陸部ガリリー盆地の鉱区での石炭採掘を許可したもの。同計画には、産出した石炭を輸送する約389kmの鉄道建設と、海外出荷に向けたグレートバリアリーフ近くでの港湾開発が含まれている。

 

 2020年の生産開始を目指し、総額160億豪㌦(約1.3兆円)を投じる計画だ。事業化当初は発電用石炭(一般炭)を年2500万㌧生産し、最終的に6000万㌧にまで増やして世界最大規模に引き上げる。採掘した石炭は大半をインドへ輸出し、石炭火力発電事業の原料とする予定という。

 

 アダニはすでに、石炭採掘などに40億豪㌦を投じている。事業の本格化には、プロジェクトファイナンスによって、金融機関から多額の資金調達をする必要がある。しかし、気候変動を激化させる懸念やグレートバリアリーフへの影響などに加えて、既存の石炭産業からも需要がシフトすることによる失業増加などの不満が指摘され、地元オーストラリアの4大銀行は昨年中に、融資断念を表明している。

 

アダニグループのGautam Adani氏
アダニ・グループを率いるGautam Adani氏

 

 このため、アダニではアジアの他の金融機関にターゲットを絞って交渉している模様だ。アダニ側は、中国の金融機関からファイナンスを得たとの感触を伝えているが、中国銀行などの4大銀行は、国際的な批判を懸念してか、プロジェクトファイナンスには参加しない模様。また韓国の金融機関も、文在寅大統領が低炭素経済移行政策を宣言していることから、海外での石炭関連事業には参加しづらい環境にあるという。

 

 日本の金融機関では、保険2社のほか、3メガバンクや三井住友信託銀行などが、石炭関連事業への投融資を厳格化する方針を打ち出している。3メガバンクの場合、石炭関連投融資を完全否定しているわけではないが、大手生保2社が融資を拒否した案件に融資をする判断はとりづらいとみられる。

 

http://statedevelopment.qld.gov.au/assessments-and-approvals/carmichael-coal-mine-and-rail-project.html

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