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日本体操協会のパワハラ問題、協賛企業の朝日生命保険にも飛び火。ネットで批判相次ぐ。問われるCSRのあり方(RIEF)

2018-09-04 13:23:39

asahiseimei1キャプチャ

 

   日本体操協会でのパワハラ問題が、CSRとして協賛してきた朝日生命保険にも影響が及んできた。過熱する報道の一部が、同社の責任を問う記事も掲載するなどしてきたため、同社は先週末、釈明のコメントを出したが、協会の第三者委員会の調査次第では、協賛の存続も再検討するとの姿勢であると報道されている。

 

 問題となっているのは、体操協会の塚原千恵子女子強化本部長と、夫の塚原光男副会長が、トラブルが起きた「朝日生命体操クラブ」の代表でもあるためだ。

 

 同クラブは、元々は朝日生命が1974年に、日本を代表する選手育成と体操の普及を目指して実業団クラブとして創立した。以来、塚原千恵子氏が同クラブの指導を行い、後に光男氏も加わった。2002年からは、塚本夫妻が経営する「有限会社塚本体操センター」へ業務委託された形となり、朝日生命は協賛という形で関わっている。

 

去就が注目される塚原夫妻
去就が注目される塚原夫妻

 

 2002年の塚本体操センターへの委託は、朝日生命側の事情が大きかったと思われる。当時、朝日生命は経営悪化から、東京海上火災グループ主導のミレアホールディングスの傘下に入る予定だった。しかし、当時の経営陣同士の対立で計画は白紙撤回となり、朝日生命は、経営危機に直面した。単独での生き残りを選択した朝日生命は、外部資金の借り入れや、厳しいリストラの断行など余儀なくされた。

 

 抱える体操クラブについても、厳しい経営環境の中で、企業スポーツを続けることへの批判があがった。同時に、伝統あるクラブへの愛着や支援などもあり、結果的に「塚原体操センター」にクラブを移管、朝日生命は協賛という側面支援の立場と、クラブ名の存続を選択した。以来、クラブは実質的に塚原夫妻が運営してきた。

 

 したがって、朝日生命が先月30日に公表したコメントのように「日本体操協会における事案については、当社としてコメントする立場にない」のである。しかし、ネットなどでは、「朝日生命が宮川選手の勧誘を指示した」「業務委託先の塚原サイドに圧力をかけたのでは」などの憶測が飛び交っている。

 

 こうしたことから、同社では、第三者委員会の調査に「しっかりと協力する」とした上で、その調査結果の内容によっては協賛の存続を「判断、検討していく」との考えを持っていることが報じられた。報道によると、8月29日に宮川選手が会見でパワハラを告発したことで、31日までに同社のコールセンターには約600件の苦情などが殺到したという。https://www.nikkansports.com/sports/news/201809030000858.html

 

 担当者は「電話でいろいろな意見をいただいている。具体的な数は把握していないが、その中には保険の解約を希望するものもある」と話したという。また、現時点で塚原夫妻側から朝日生命への連絡、謝罪などはないという。

 

 企業のCSR活動が、企業自身にネガティブな影響を及ぼす事態になっているとの見方も出来る。クラブへの協賛を続けることで、保険契約がとれなかったり、解約につながるようだと、協賛の意味はない。ただ、経営危機も乗り越えて継続してきた「朝日生命体操クラブ」だけに、今回の不祥事で、支援断念というのも残念な気もする。

 

 同クラブを再生し、設立当初の健全性と自由闊達な環境を取り戻すために、企業がどう関与するか、どう協賛するか、その点が朝日生命側に求められているのではないか。不祥事で浮上したのは、まさに体操クラブのガバナンス問題である。経営危機から立ち直った朝日生命は自らの経験を、クラブのガバナンスの改革に生かせるのではないか。そうなってこそ真のCSR活動となる。同社も逃げずに、社会的責任を果たしてほしい。

http://www.asahi-life.co.jp/oshirase_20180830.pdf