HOME8.温暖化・気候変動 |1998年から2017年の20年間で発生した自然災害の経済損失額は330兆円、大半は気候変動関連の災害で前20年間に比べ2.5倍増。国連・国際防災戦略事務局が報告(RIEF) |

1998年から2017年の20年間で発生した自然災害の経済損失額は330兆円、大半は気候変動関連の災害で前20年間に比べ2.5倍増。国連・国際防災戦略事務局が報告(RIEF)

2018-10-11 21:05:31

Disasster5キャプチャ

 

  国連国際防災戦略事務局(UNISDR)は10日、1998年~2017年の20年間に自然災害によって世界全体で130万人が死亡し、経済損失額は2兆9080億㌦(約330兆円)に上るとの報告書をまとめた。このうち大半の77%の2兆2450億㌦は気候変動に起因する災害で、その前の20年間と比べると、2.5倍に増加していることがわかった。

 

 20年間全体の自然災害発生件数は7255件。このうち、気象に起因する災害が全体の91%と圧倒的に多い。洪水、暴風雨、干害、熱波などの気候変動災害で、特に洪水と暴風雨による被害が大きかった。件数は前20年間に比べて2.2倍増。

 

 130万人の死亡者のうち、過半以上の56%(74万7234人)は津波を含めた地震被害による。津波を含む地震の発生は2011年の東日本大震災を含めて563件。災害全体で、負傷したり、移住を強いられたりした人は実に44億人に達した。

 

国別の自然災害の経済損失額、日本は3位
国別の自然災害の経済損失額、日本は3位

 

  経済損失総額の2兆9080億㌦は前20年に比べると、2.2倍に増えた。総額に占める気候変動関連の経済損失比率の77%(2兆2450億㌦)は、前20年間の68%(8950億㌦)から10ポイント近くも上振れしたことになる。

 

 国別の経済損失では米国の9448億㌦で最大。05年のハリケーン・カトリーナと17年のハーベイ、イルマなどの大型ハリケーンによる被害が大きかった。2位は大洪水や四川大地震などに見舞われた中国(4922億㌦)、3位は東日本大震災などの日本(3763億㌦)だった。

 

自然災害で最も多いのは洪水と暴風雨
自然災害で最も多いのは洪水と暴風雨

 

 経済損失額は各国からの報告を集計したものだが、先進国などの高所得国は保険の普及などもあり、20年間に発生した災害のうち53%から経済損失を報告している。これに対して低所得国の場合は、発生した災害の13%でしか損失発生の報告がないという。

 

 これは被害がなかったわけではなく、UNISDRは被害実態の把握ができない国が多いため、とみている。したがって、実際の経済損失額はさらに膨らむ可能性が高い。2000年以降の自然災害による100万人当たりの死者数は、低所得国は平均130人。これに対して高所得国では同18人にとどまる。低所得国は高所得国より7倍以上死亡数が大きいことになる。

 

過去20年間で被害が大きかった上位10位の災害。ハリケーン・カトリーナが1位
過去20年間で被害が大きかった上位10位の災害。ハリケーン・カトリーナが1位

 

 ベルギーのルーベン・カソリック大学災害疫学研究センター(CRED)のDebarati Guha-Sapir教授は「今回の報告書は、貧富によって災害からの保護のギャップがあることを浮き彫りにした。特に気候変動の影響を考えると、温室効果ガス排出増加にもっとも寄与していない貧困層が、温暖化による自然災害の影響を受けていることになる」と指摘している。

 

 報告書は、気候変動は自然災害の頻度と強度を増大させており、自然災害は持続可能な発展の主要な障害であり続け、災害の被災を受けにくい場所での立地を選ぶ経済的インセンティブが高まる、としている。これらも途上国にとって企業誘致上、不利に働くとみられる。

https://www.preventionweb.net/files/61119_credeconomiclosses.pdf