HOME2. 保険 |国連環境計画 金融イニシアティブ(UNEP FI)は、日本勢を含む世界の大手損害保険会社16社と、気候リスクが保険業界に及ぼす影響を精査、気候リスク・アセスのツール開発へ(RIEF) |

国連環境計画 金融イニシアティブ(UNEP FI)は、日本勢を含む世界の大手損害保険会社16社と、気候リスクが保険業界に及ぼす影響を精査、気候リスク・アセスのツール開発へ(RIEF)

2018-11-16 08:05:34

UNEPFI1キャプチャ

 

  国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)は、日本の3メガ損保を含む世界の大手保険会社16社と、気候変動リスクが保険事業に及ぼす影響を評価する新たなリスクアセスメント・ツールを開発するためのワーキンググループを立ち上げた。新ツールは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の報告に沿うものを目指す。

 

  今回、UNEP FIとの連携作業に参加する16社はUNEP FIが組織する「持続可能な保険原則(PSI)」のメンバー各社でもある。アリアンツ(独)、アクサ(仏)、NN Group(オランダ)などとともに、日本勢は東京海上、損保ジャパン日本興亜、MS&ADグループが参加している。16社の運用資産総額は合計5兆㌦、保険料収入は世界の約10%を占める。

 

 グループは最新の気候リスクを評価するため、先見的な気候シナリオ知見を含む最新の気候科学を活用する、としている。保険業界はリスク分析を本業としており、気候リスクによる保険金支払い増という直接の影響も被っていることから、業界全体で開発するツールには、他の金融機関等からもプラスの効果を期待されている。

 

 UNEP FIのエリック・ソルハイム事務局長は「保険業は時代を超えて、リスクを引き受け、削減し、価格付けすることによって、社会の早期警戒システムとして、さらにはリスクマネジャーとして機能してきた。気候変動リスクは増大しており、保険業界と世界の経済社会全体にとって、深刻な脅威になっている。保険業界による警鐘は大きく、明瞭になってきた」と指摘している。

 

  さらに同氏は「保険が効かない社会になると、企業が負担しきれない分が社会のコストになってしまう。だからこそUNEPFIは今回、世界の主要な保険会社と連携して、いかにして気候変動のリスクを理解し、軽減させるかいう課題に取り組んでいる」と説明している。

 

 保険会社が総力をあげて取り組むツールと指標は、保険会社のポートフォリオに占める気候変動関連の物理リスクと移行リスクの評価に、最新のシナリオ分析を統合しようという狙いだ。保険カバー率が広いと、リスク低減、リスクへの価格付け、投資のリスク低下、社会・ビジネス・政府に対して金融ショックの緩急財を提供することにもなる。

 

 同時に、保険会社は自らがグローバル資産を30兆㌦(約5650兆円)以上も抱える主要な投資家でもある。今回の取り組みは、保険会社のコア・ポートフォリオと製品が抱える気候リスク評価に照準を合わせている。

 

 TCFD議長のマイケル・ブルムバーグ氏は「保険会社が経済に与える気候リスクを理解すればするほど、保険会社はリスクの制御と顧客と向き合うための思量深い判断ができるはずだ。そうなれば市場は、より効率的でより安全な社会に変貌するだろう」と述べている。

 

 東京海上日動の北沢利文社長も「TCFD保険パイロットワーキンググループの議論に積極的に参加することを通じて、UNEP FIを全力で支援し、効率的な気候関連情報開示の手法を作り上げることに貢献していく」とコメントした。

 

 損保ジャパン日本興亜社長の西澤敬二社長は「ワーキンググループへの参画を通じて、低炭素社会の実現へ貢献するとともに、気候変動など地球環境問題への対応に積極的に取り組み、レジリエントで持続可能な社会の実現に貢献していく」と語った。MS&ADの柄澤康喜社長は「TCFD保険ワーキ ングループでは、保険業界における気候変動に関する情報開示の手法を検討していく」とコメントしている。

http://www.sjnk.co.jp/~/media/SJNK/files/news/2018/20181113_1.pdf

http://www.unepfi.org/psi/wp-content/uploads/2018/11/PSI-TCFD-Insurer-Pilot-Group-Press-Release.pdf

https://www.ms-ad-hd.com/ja/news/news_topics/news_topics-9082139515200628715/main/0/link/181114_TCFD_hd.pdf