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損保ジャパン日本興亜、ミャンマーでの天候デリバティブプロジェクトを今月から開始。コメ農家の干ばつ被害を補償。衛星リモートセンシング技術を適用(RIEF)

2018-12-25 12:31:11

sonpoJキャプチャ

 

 損害保険ジャパン日本興亜は、ミャンマーで「天候デリバティブ」のパイロットプロジェクトを今月からスタートする。同社はアジアの途上国での温暖化被害を軽減させるため、気候変動による自然災害対策としての農民向けの天候デリバティブをタイやフィリピンで展開している。ミャンマーでも2014年から準備を進めており、今回、衛星リモートセンシング技術を使ったパイロット事業を始めることになった。

 

 事業は、ミャンマーの保険会社のMyanma Insurance(ミャンマインシュランス)と、主に農業従事者向け融資を行うMyanma Agricultural Development Bank(MADB)と共同で実施する。

 

 ミャンマーでは、近年、気候変動の加速によって、農作物の生育時の干ばつや、収穫時の洪水などの自然災害による被害が多発し、主要産業である農業に深刻な被害をもたらしている。損保ジャパン日本興亜は、2014年に同国の同国専用の天候インデックス保険の試作 モ デルを開発、その後も、コメ業界団体であるMyanmar Rice Federation(MRF)と業務提携の覚書を交わすなど、着実に対応策を準備してきた。http://rief-jp.org/ct2/63411

 
   天候デリバティブは、極端な気象現象によって農作物が不作となって収益が減少したり、災害対策の費用増大といった被害を受けた場合の損害に対応できる仕組みだ。保険金の支払いの際に損害の調査を必要とせず、早く保険金を受け取ることができる特長もあり、保険インフラが先進国と比較して成熟していない途上国での適用に適している。

 

損保ジャパン日本興亜が開発・提供する天候デリバティブプロジェクト
損保ジャパン日本興亜が開発・提供する天候デリバティブプロジェクト

 

 同社が先行してタイなどで展開してきた天候デリバティブ商品については、一般社団法人環境金融研究機構(RIEF)が選定する「2016年サステナブルファイナンス大賞」で、大賞に選ばれている。http://rief-jp.org/ct2/67725

 
 同商品の保険設計の場合、現地での気候データが不可欠だ。しかし、タイなどと違って、ミャンマーでは、気象観測のためのインフラが必ずしも十分に整備されていないことが大きな課題となっていた。そこで、2014年に開発した試作モデルでは、一般財団法人リモートセンシング技術センター(RESTEC)と共同で衛星リモートセンシング技術を取り入れて、商品設計を進めてきた。

 

 同技術応用のめどがついたことから、今回のパイロット事業では、保険の対象をミャンマーの中央乾燥地帯であるピー・タウンシップ(バゴー管区)およびシュエボー・タウンシップ(ザガイン管区)とし、被保険者は同地域の農業従事者と定め、実際に保険商品を販売する。対象となる作物は、コメ。対象リスクは干ばつ(雨季の少雨リスク)に絞った。

 

 保険による補償内容は、人工衛星からの気象情報をもとに推定された雨量が、予め設定した値を下回った場合に、事前に定めた金額を保険金として支払う。保険の引き受けは現地のミャンマインシュランスが担当し、商品の販売は、MADBが行う。MADBは農業従事者向けシーズナルローンを提供しており、その申込者に対して「天候インデックス保険」の加入を推奨する。

 

 保険商品を開発した損保ジャパン日本興亜は、テクニカルアドバイザーとして、同事業をサポートする。モデル地域での活用が順調にいけば、ミャンマー全土に広げて展開する方針。温暖化対策のAdaptation対策を民間の保険技術を適用し、市場化するモデルケースになる。

http://www.sompo-hd.com/~/media/hd/files/news/2018/20181219_2.pdf