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損保各社、災害被害の火災保険引き受けに、地域差料率設定を検討へ。防災対策の促進や、危険地域での建物建設の抑制効果等を目指す(各紙)

2019-01-30 16:54:19

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 各紙の報道によると、損害保険各社が、ここ数年、相次ぐ集中豪雨や台風被害で保険金支払いが増えていることを受けて、地域によって水害被害を補償する保険料に差を設ける方向で検討に入っていることがわかった。水害被害が起こりやすい地域の保険料率は高めに設定する一方、安全性の高い地域では料率を低くすることで、地域での防災対策を促す効果もあるとしている。温暖化進行に対する適応(Adaptation)策のひとつともいえるが、地域や個人の負担増となる地域では議論が起きそうだ。

 

 朝日新聞が東京海上ホールディングスの永野毅社長への取材として報じた。それによると、永野氏は、水害被害に関する保険料率について「地域ごとに差をつけるのも必要になってきている」と述べ、保険料見直しを議論する第三者機関の損害保険料率算出機構が検討を始めたと明かしたという。保険料の見直しは金融庁の認可が必要となることから、算出機構の検討と並行して、来年にかけて議論される見込み、としている。https://digital.asahi.com/articles/ASM193Q6ZM19ULFA00B.html?iref=pc_ss_date

 

  保険料率の地域差については、現在の火災保険でも、台風や豪雪の発生頻度、建物の密集度の違いなどから都道府県ごとに差が設けられている。また自動車保険も交通事故率の高い都道府県では料率に差が設けられているとされる。火災保険料の基礎となる機構の「参考純率」は地域ごとに最大で2.6倍の差があるという。

 

永野毅・東京海上グループCEO・社長
永野毅・東京海上グループCEO・社長

 

 これまで、自然災害である水害の場合、局地的な豪雨もあるほか、細かな地形も被害に影響するため、都道府県の区分けで差をつけるのは難しいとされてきた。ただ最近の災害では、各地域での水害対策の違いによる被害の拡大や、危険地域での建物被害の増加などが目立つ場合もある。

 

 こうした状況でも、これまでのように、一律の保険料率だけでのカバーだと、防災対策を重視している地域や、建物の住民は被害が少ないので、保険金受け取りが少なく、そうではない地域の住民は、同じ保険料でも被害による保険金受け取りが増えることになる。その結果、被害可能性の高い保険加入者の保険利用が増える「逆選択」が生じるリスクも指摘されている。

 

 また、水害対策が不十分な地域や建物の保険料率が高くなることで、自治体等の防災意識が高まり、対策が進むほか、個人の場合も建物を新築する際、保険料が高くなる地域での建設を避ける効果を引き出す期待もある。報道によると、永野氏は「抜本的に災害に遭わないことを考える必要がある」と指摘した。

 

 災害リスクは行政区分である都道府県とは別に生じる。このため、見直しに際しては、同じ都道府県内でも災害発生の可能性の高い地域や、防災対策の進捗度に応じて、差をつけることが考えられるという。

 

 損保業界では、昨年夏から秋にかけて、日本各地を襲った豪雨や台風被害等によって損害保険支払い額が1兆円を超えたとされる。まだ業界が想定する災害発生モデルの範囲内とされるが、永野氏は「温暖化の加速によって、今後も災害が頻発するならモデル自体を変えないといけない」と述べた。

 

 損保各社は、近年の自然災害の増大を受けて、火災保険の料率引き上げを今年の秋をメドに実施する見通し。保険料率の地域差導入は、その次のステップとなる。

https://digital.asahi.com/articles/ASM193Q6ZM19ULFA00B.html?iref=pc_ss_date

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