HOME8.温暖化・気候変動 |台風19号による企業・工場部門の保険金損失額、最大で1兆7500億円に達する可能性。米保険モデル会社が試算。最悪の場合、昨年の西日本豪雨をもたらした21号被害を上回る可能性も(RIEF) |

台風19号による企業・工場部門の保険金損失額、最大で1兆7500億円に達する可能性。米保険モデル会社が試算。最悪の場合、昨年の西日本豪雨をもたらした21号被害を上回る可能性も(RIEF)

2019-10-24 22:06:52

typhoon19キャプチャ

 台風19号による産業部門の被害で、保険会社の保険金支払い損失額は最高で1兆7300億円に達するとの推計が示された。米保険モデル会社のAIRの推計。損失の半分以上は洪水によってもたらされたとしている。推計通りだと、昨年、西日本に豪雨被害をもたらした台風21号による保険金損失額に匹敵する。

 

 AIRの推計は22日に公表された。保険損失額の推計は8650億円~1兆7300億円の幅で示された。

 

 関東から東北にかけて甚大な被害を引き起こした台風19号は、各地に200ミリから500ミリ以上の豪雨をもたらし、河川の決壊、氾濫、洪水を随所で発生させた。箱根では939.5ミリの驚異的な降雨があったほか、各地で年間の降雨量の30%~40% が2日間だけで降った計算だ。

 

typhoon2キャプチャ

 本州に設置された540の河川の水位を測る量水標のうち、85以上で過去100年でもっとも高い水位を記録し、100以上で過去最高水位となった。加えて19号の上陸前に震度5.7の地震が関東で発生、15号の被害で脆弱になっていた地域に打撃を与えたことも、19号被害の拡大に影響したとしている。


 集中的な豪雨や河川の氾濫等による洪水の影響は、各建物に大量のゴミと汚泥を流入させ、回収・洗浄コストを増大させるとともに、特に産業・商業設備の事業継続損失額を増大させる要因になったとみられる。

 

 関東地区では、一カ月前の台風15号によって損害が発生した建物等がまだ改修されていない段階で、19号によって追加的なダメージを受けたケースが少なくなかった。こうした複合的な要因の上積みで保険損失額が上振れする可能性があると指摘している。


 AIRの推計モデルの損失対象は、①建物向けの保険損失額(住居用、商業、産業、農業・共済)②建物内部の機器等の損害額、ゴミ等の除去や水に浸かったり、強風で破損したりした自動車等の追加的な損害額等を含む。

 

 モデルに含まれないのは、①土砂崩れ②竜巻や地震による損失額③土地の損壊費用④インフラの損壊費用⑤建設工事保険・組立保険、船舶、船荷⑤事業中断損失⑥損失調整関連費用⑦改修・修繕コストの増大、等。

 

 AIR は、1987年の設立で、異常出来事に対するリスクモデル手法を開発する専門会社。中心となるAIR Worldwideは自然災害や、テロリズム、伝染病、壊滅的な損害事故、サイバー事故等のカタストロフィーリスクモデルを開発、保険会社や金融機関、企業等にサービスを提供している。

 

 ただ別のモデル会社AM BESTが5日前に公表した推計では、台風19号による日本の主要3損害保険会社の保険金損失額は2000億円程度としている。被害の実態がいまだに十分に把握されていない点と、今回の被害の特徴であった洪水による保険損失額の評価の違いによるとみられる。

 

 また台風15号による被害が改修されていなかった地域で、19号による打撃を受けた場合の重複損失の場合の評価や、地震の影響をどの程度勘案するかなど、これまでの台風被害とは異なった要因を保険金損失算定でどこまで評価するかが課題となりそうだ。

 

https://www.air-worldwide.com/Press-Releases/AIR-Worldwide-Estimates-Insured-Losses-for-Typhoon-Hagibis-Will-be-Between-USD-8-Billion-and-USD-16-Billion/

http://news.ambest.com/PressContent.aspx?altsrc=14&refnum=28596