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損保ジャパン日本興亜、災害時の売上・利益減少等の財務的影響を機械学習とAIで推計する「災害レジリエンススコアリングモデル」開発。企業の気候リスク需要に備える(RIEF)

2020-01-03 17:54:24

sompo1キャプチャ

 

  損害保険ジャパン日本興亜は、自然災害時に企業が売り上げや利益の減少などの財務的影響をどの程度受けるかを推計する「災害レジリエンススコアリングモデル」を開発した。SOMPOリスクマネジメント、一橋大学、東京商工リサーチ(TSR)の各社・機関と連携した。温暖化の進展で高まる企業の気候リスクへの対応強化に役立てる考えだ。

 

 日本で多発する地震や台風による風水災等によって、企業は生産設備や資産に損害を受けると、自社の生産・サービスの提供が困難となるほか、災害後の復旧のための追加費用もかかる。その結果、売上・利益が減少する。企業自体が被災しない場合でも、仕入先等のサプライチェーンが被災すると、同様に売上・利益減の可能性が生じる。



 これまでの損害保険商品では、自然災害時の企業の利益減少を補償できるが、企業間取引による間接的な財務的影響まではカバーできない。今回のスコアリングシステムは、サプライチェーン停止リスクを「見える化」し、財務インパクトを客観的に評価できることで、企業の気候リスクマネジメントに資することが期待される。

 

TSEキャプチャ

 

 開発したモデルは、TSRと一橋大学(大学院経営管理研究科・宮川大介准教授)が昨年3月に、「機械学習手法・AIを用いた企業の将来予測」として特許出願した技術を元にしている。

 

 同モデルは、TSRが保有する数百万件に及ぶ企業の倒産、休廃業、解散、被合併など、企業の退出に関する出来事のほか、売上や利益の顕著な成長、雇用の大幅な伸長、労働生産性の向上など、企業の成長に対応するイベントによる影響をビッグデータとして活用する。

 

 これらのデータに、東日本大震災時の災害データを学習データとして加えて、企業の売上高や利益の変動を機械学習手法によってモデル化した。伝統的な手法(例:回帰分析)では、モデル構築に必要な変数の数に限りがあるうえ、分析者の裁量の影響等の点で、ビックデータ分析とは相性が悪いとされる。

 

 

 災害イベント発生によるサプライチェーン停止リスクの顕在化を評価する「災害レジリエンススコア」に基づいて、企業は自らが抱える災害リスクを減少させる事前対応に活用できる。

 

 災害時の事業停止期間や復旧 期間等についても、SURI(Stanford Urban Resilience Initiative)等の推定手法を取り入れた。今後、台風や洪水などの自然災害による財務的影響評価にも拡張できるモデルの高度化も進めるとしている。

 

 損保ジャパン日本興亜では、モデルを活用した企業の災害発生時の売上・利益減少の財務影響や「スコア」評価に基づいて、企業向けリスク回避ソリューションやBCPサービスを展開していくとしている。

http://www.sjnk.co.jp/~/media/SJNK/files/news/2019/20191230_1.pdf