HOME |金融庁、スチュワードシップコードを3年ぶりに改定。ESGを含むサステナビリティ配慮を盛り込むとともに、議決権行使助言会社等の行動基準を新たに盛り込む(RIEF) |

金融庁、スチュワードシップコードを3年ぶりに改定。ESGを含むサステナビリティ配慮を盛り込むとともに、議決権行使助言会社等の行動基準を新たに盛り込む(RIEF)

2020-03-28 23:22:46

FSA111キャプチャ

 

 金融庁は、機関投資家向けの行動指針(スチュワードシップ・コード)を3年ぶりに改定した。今回の改定では、スチュワードシップ責任を果たすため戦略の中に、ESG要素を含む中長期的なサステナビリティを盛り込むことを求めたほか、新たに議決権行使助言会社・年金運用コンサルタントがインベストメント・チェーン 全体の機能向上に資することを求める原則を追加した。

 

 改定されたコードは、今年6月にピークを迎える株主総会から対応を求められる。コードの中核は8項目の原則で構成される。

 

FSA22キャプチャ

 

 それらは、機関投資家の責務としてーー

 ①スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針の策定と公表する

 ②同責任を果たす上で管理すべき利益相反について、明確な方針と公表する

 ③投資先企業の持続的成長に向けて同責任を適切に果たすため、当該企業の状況を的確に把握する

 ④投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図り問題の改善に努める

 ⑤議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つ

 ⑥議決権行使も含め、同責任を果たしていることを顧客・受益者に対して定期的に報告

 ⑦投資先企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を適切に行うための実力を備える

 ⑧機関投資家向けサービス提供者は、機関投資家が同責任を果たすに際し、適切にサービスを提供し、インベストメン ト・チェーン全体の機能向上に資するよう努める

 

FDSA3キャプチャ

 

 今回の改定では、これらの原則の中に、ESGやサステナビリティへの配慮・考慮を盛り込んだ点が最大のポイントだ。たとえば①の「スチュワードシップ責任の明確な方針の策定」では、運用戦 略に応じたサステナビリティ(ESG 要素を含む)の考慮に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値の向上やその持続的成長を促すことで、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図るべき、としている。

 

 ④の「建設的な『目的を持った対話』」では、 サステナビリティを巡る課題に関する対話では、運 用戦略と整合的で、中長期的な企業価値の向上や企業の持続的成長に結び付く ものとなるよう意識すべき、と指摘している。⑦では運用戦略に応じたサステナビリティの考慮を盛り込んだ。

 

 またアセットオーナーのスチュワードシップ行動については、従来は一律の規定だったが、「自らの規模や能力等に応じ」との表現を入れ、運用機関に応じた実効的スチュワードシップ活動が担保されるよう求める形に修正した。

 

 議決権行使についての規定を詳細にしたのも今回の特徴だ。機関投資家が自ら議決権を行使するに際して、議決権行使の賛否の理由について対外的に明確に説明することを求めるとともに、特に「外観的に利益相反が疑われる議案や議決権行使の方針に照らして説明を要する判断を行った議案等については賛否を問わず、その理由を公表すべき」とした。

 

 新たに設けた議決権行使助言会社に関する⑧の原則では、「インベストメント・チェーン 全体の機能向上に資するよう」求めた。さらに、議決権行使助言会社が日本拠点の設置を含めて人員や組織の体制を整備することを求めている。また機関投資家に対してだけではなく、働きかける企業に対しても、「必要に応じ、自ら企業と積極的に意見交換しつつ、助言を行うべき」とした。

 

https://www.fsa.go.jp/news/r1/singi/20200324/02.pdf