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日本取引所グループ、上場企業のESG情報開示の「実践ハンドブック」公表。4つのステップでの開示促進を提示(RIEF)

2020-04-03 00:33:14

ESG55キャプチャ

 

   日本取引所グループ (JPX)は、上場会社が自社のESG情報開示を進めるためのモデルとなる「ESG情報開示実践ハンドブック」を公表した。上場会社と投資家の対話を促進して、中長期的な企業価値向上を目指すために、自社に適したESG取り組みを促すことが目的。基本的な「ESG課題とESG投資」についての理解から、「情報開示とエンゲージメント」までの4ステップを提示、企業の取り組みの道筋を示している。

 

 JPXはこれまでも、ESG 情報のうち、G(ガバナンス)の情報については、コーポレート・ガバナンス報告書での開示を求めてきた。また2019 年6月には、国際的な証券取引所で構成する「サステナブル・ストックエクスチェンジ(SSE)」イニシアティブが作成した「ESG 情報の報告に関する企業向けモデルガイダンス」の日本語版を公表して、企業の参考にしている。

 

 今回、こうしたモデルを具体化させる形で、新たにESG情報開示を検討する上場会社向けの「手引き」としてハンドブックを作成した。既に ESG 情報開示を実践している上場会社が、開示の改善等を図るうえで参考にすることも想定している。

 

 JPXがこうしたハンドブックを作成した背景には、国内外でESG情報開示用として基準やイニシアティブ、フレームワーク、ガイダンス等が並列するが、それらのどれを自社の情報開示に役立てればいいのか、内外市場環境等の違いをどう反映させればいいのか、といった実務的な悩みを抱えている企業が少なくないという実情がある。

 

ハンドブックが示す4つのStep
ハンドブックが示す4つのステップ

 

 ESG情報開示の手法としては、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)、サステナブル会計基準機構(SASB)、CDP、気候開示基準機構(CDSB)、国際統合報告評議会(IIRC)、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)などの開示手法が「乱立」している。その多くが欧米の基準に準拠しており、日本勢にとって使い勝手が必ずしも納得のいくものばかりではないとの声もある。

 

 JPXのハンドブックは、これからESG情報の開示を始めようと考える上場会社を念頭に置いているが、「日本の全上場会社の利用を想定して作成した」としている。内容については、SSEのモデルガイダンスをはじめ、TCFDやSASB、経産省の価値協創ガイダンス等を活用している。さらに、上場会社が自社の状況に合わせて必要な部分を参照できるよう4段階のステップを示している。

 

 ステップ1では、ESG情報についての基本的理解を整理したうえで、ステップ2では、投資判断に有用な情報の開示を促す観点から、自社の戦略との関係で重要なESG 課題(マテリアリティ)の特定を求めている。ステップ3では、ESG取組みを着実に進めるために、監督と執行面の社内体制を構築し、指標・目標値の設定を求めている。そしてステップでは、ESG課題と企業価値の結び付きを踏まえ、投資判断に資する形でのESG情報開示の実践を提示。それによって、投資家等のステークホルダーとの対話を積極的に行い、中長期的な企業価値向上につなげる、という展開だ。

 

 ハンドブックは、この4つのステップについて、「絶対的な方法ではなく、上場会社が自社の状況を踏まえて可能なところから着手していい」とし、自社判断での開示の促進と、投資家との対話等に踏み出すことを求めている。ステップごとの取り組み事例として、モデル企業の取り組み状況も提示している。

https://www.jpx.co.jp/corporate/sustainability/esg-investment/handbook/nlsgeu000004n8p1-att/handbook.pdf