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グローバルな機関投資家7団体、新型コロナウイルスからの経済回復策、「持続可能性と公平性」とパリ協定との整合性を要請。高炭素企業の支援はCO2実質ゼロ義務付けを求める共同書簡(RIEF)

2020-05-04 22:04:37

IA1キャプチャ

 

   新型コロナウイルス感染の拡大から、回復への模索が始まる中で、低炭素社会の実現を目指す機関投資家等は、 「景気回復策は『持続可能性と公平性』を何よりも重視すべき」としたうえで、炭素集約度の高い企業に対して、政府が救済や補助金、融資、税優遇などの措置をとる場合は、公的支援と引き換えに、2050 年までにCO2排出量実質ゼロの達成を義務付けること等を求める共同書簡を公表した。

 

 共同書簡をまとめたのは、機関投資家イニシアティブ「インベスター・アジェンダ(Investor Agenda)」を推進している機関投資家団体。国連支援の責任投資原則(PRI)、気候変動に関する機関投資家グループ (IIGCC)、CDP、米環境NGOのセレス、気候変動に関するアジア投資家グループ(AIGCC)、気候変動に関する投資家グループ (IGCC)、国連環境計画(UNEP)の7団体のCEO、代表。

 

Investor Agendaを構成する7団体
Investor Agendaを構成する7団体

 

 書簡では、各国とも財政的に困難な状況にあることを踏まえ、公的資金の活用と同時に、民間資金を効率的かつ公平に投入することが不可欠、としている。そのために、数兆㌦の運用資産を保有する投資家の動きが経済回復を促進するうえで非常に重要、と位置付けている。

 

 各国政府に対しては、景気対策を実施するうえで、「気候危機の重要性を忘れるべきではない」と明記。気候変動に関連する、深刻かつ複合的でシステム全体を揺るがす予測可能な経済的・財政的リスクを考慮に入れるよう求めた。

 

 機関投資家に対しては、急速に進む地球温暖化によって、今後、顧客・受益者に長期的なリターンをも たらす能力を試され、物理的リスクと移行リスクに直面すると警告。同時に、CO2排出実質ゼロへの移行を促すことで、エネルギ ー安全保障やクリーンな空気などのコベネフィットと共に、新たな雇用と経済成長の 機会を得ることができると指摘している。

 

 そのうえで、各国政府は経済回復策の策定において、「持続可能性と公平性を何よりも重視すべき」としたうえで、気候変動リスク軽減を目指すパリ協定との整合性を確保するよう求めている。特に、政府が公的資金によって救済や補助金、融資などの措置を炭素集約度の高い企業に与える場合は、公的支援と引き換えに、パリ協定に沿った気候変動移行計画の確立と実行、具体的には、2050 年までにCO2排出量実質ゼロの達成することを義務付けるべき、としている。

 

 公開書簡が求める5つの基本対策

 

① 人々の救済と雇用創出を最優先すること。政府は、コミュニティと労働者、とりわけ社会的に最も弱い立場に置かれた人々を、新型コロナウイルスの影響と景気低迷から保護しなければならない。回復計画は、排出量実質ゼロのエネルギー・産業・建築物・交通 システムや、気候変動に対するレジリエンス強化、持続可能なインフラへ投資等に適合する雇用を社会全体で創出すべき。

 

②パリ協定との整合性。政府、投資家、企業は、世界の平均気温上昇を1.5℃に抑え、遅くとも2050年までにCO2排出実質ゼロを実現するために、パリ協定に整合するコミットメントを維持し、また強化すべき。

 

③新型コロナウイルスに係る政府の支援措置は気候変動リスクに対応するものとすること。 特に政府の公的資金による救済や補助金、融資、税優遇、一時的な株式購入などの措置を受ける炭素集約度の高い企業に対しては、これらの公的支援と引き換えに、パリ協定の目標に沿う気候変動移行計画を確立・実行し、2050 年までにCO2排出量実質ゼロの達成を義務付けるべき。

 

④気候変動に対するレジリエンスとゼロエミッション経済構築に向けた解決策を最優先すること。政府は、クリーンエネルギーへの新規の投資と雇用創出を促進することで景気回復を早めることができる。さらに、長期的かつクリー ンな雇用と経済成長を促す、交通システムの電化や工業プロセスのクリーン化、「コミュニティ資産」の堅牢化等、持続可能な新インフラを支援すべき。

 

⑤経済回復策の策定プロセスに投資家を参画させる。パンデミック緊急救済措置の実施後、多くの政府は財政的に一層困難な状況に陥る。それゆえ、民間資金の呼び込みは非常に重要。政府は、投資家の助言を得て持続可能な回復計画を策定することで、より効率的かつ公平な成果を生み出すことができる。

 

https://www.aigcc.net/wp-content/uploads/2020/05/FINAL-Investor-Agenda_Recovery-Statement-JPN.pdf