HOME |シベリアの北極圏域で、気温38.0℃を記録。観測史上始まって以来の最高気温。永久凍土溶解、森林火災増大。ロシアの気候学者「温暖化抑止はもう無理。適応策を優先すべき」と警告(RIEF) |

シベリアの北極圏域で、気温38.0℃を記録。観測史上始まって以来の最高気温。永久凍土溶解、森林火災増大。ロシアの気候学者「温暖化抑止はもう無理。適応策を優先すべき」と警告(RIEF)

2020-06-26 00:00:04

Syberia002キャプチャ

 

 地球上でもっとも寒い地域の一つであるロシアのシベリアの北極圏内で、先週末、気温が38℃まで上昇、気候関係者を驚かせている。サハ共和国の小さな村、ベルホヤンスクで先週末に観測史上最高の気温を記録した。北極圏内全体でも歴史的な最高温度になる。極地での温暖化の影響は、他の地域より約2倍大きいとされ、気温上昇が加速していることを示す。今後、海では海氷の溶解が一段と進み、森林地帯では山火事が増大するなど、生態系への影響の悪化が懸念される。

 

 ベルホヤンスクは、ロシア極東のサハ共和国の首都ヤクーツク市から北北東へ675kmのところにある人口1000人強の小村。今月20日に同地のPogoda i Klimat気象観測所が38℃を記録した。観測システムのミスではないかとの疑念も浮上したが、21日にも35℃を超えた。

 

 これまでの北極圏域内での最高気温は1915年にアラスカのフォート・ユーコンで記録された37.5℃とされる。ロシアの今年の冬は例年にない暖冬で、モスクワでも雪がほとんど降らなかった。モスクワも先週17日には、31℃まで上昇、1892年に記録した30.8℃を128年ぶりに更新する「暑い夏」となっている。ベルホヤンスクでは、昨年11月にはマイナス50℃にまで下がったことから、最寒気と史上最高気温の温度差は、実に88℃の変動になる。

 

シベリアは広い。この77%を覆う永久凍土が溶け出している
赤い点がベルホヤンスク。シベリアは広い。この77%を覆う永久凍土が溶け出している

 

 ベルホヤンスクはそのモスクワから東へほぼ5000km離れている。モスクワからベルホヤンスクに至る北緯66.5°以上の北極圏全体が熱波に包まれているともいえる。今月初めには、北極圏内のノリリスクの資源会社の火力発電所付属施設から約2万㌧のディーゼル燃料が流出する事故が起きたが、事故原因は地盤の永久凍土が溶融し、建物の基礎に亀裂が入ったとみられている。異常な温度上昇の影響で、永久凍土も溶け出しているわけだ。http://rief-jp.org/ct12/103186

 

 懸念されるのは、こうした永久凍土の溶融によるシベリアのインフラ施設の倒壊・機能不全のほか、毎年のように生じる森林火災の増大化、干害の広がりによる穀物生産への打撃、さらには新型コロナウイルス感染拡大の様な疫病の蔓延等が広がる懸念だ。

 

 シベリアの他の地域でも高温が続いている。同じ北極圏のロシア北西部のネネツ自治管区のニージュニャヤ・ペシャでは今月9日に30℃を記録、ロシアで人の居住するもっとも北部の街、タイミル半島のハタンガでも5月22日に25℃を記録している。同地の従来の春の最高気温は12℃だったので、一気に、その倍以上に上昇したことになる。

 

 デンマークの気候研究所のMartin Stendel氏はツィッターで「5月以降のシベリアは、10万年に一度の出来事が起きている」と指摘。ロシアのペテルスブルグのVoeikov Geophysical Observatoryの気候学者、Andrei Kiselev教授は「もはや気候変動の勢いを止めることはできない。気候変動に適応することを最優先せざるを得ない」と警告している。

 

 パリ協定だ、TCFDだ、石炭火力をどうする、などと議論をしている間に、もう地球の気温上昇は、ティッピング・ポイント(閾値)を超えてしまっているとしたらーー。(RIEF)

 

https://bellona.org/news/arctic/2020-06-siberian-village-records-arctics-hottest-temperature-ever