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国連持続可能な開発目標(SDGs)、2030年の達成は無理で2082年までかかる。新型コロナウイルスの影響が長期化すると、さらに10年遅れ。米非営利団体SPIが年次報告で指摘(RIEF)

2020-09-14 22:45:41

SPI001キャプチャ

 

   国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成は、現状の緩やかなペースだと、目標の2030年には到底届かず、2082年までかかるとの推計が示された。新型コロナウイルス感染拡大による経済社会の混迷が深まると、さらに10年遅れになるリスクがある。米NPOの「Social Progress Imperative (SPI)」が2020年の報告で明らかにした。

 

 SPIは国ごとに社会経済関連の項目をインデックス(Social Progress Index:SPI)として数値化、各国の状況をランキングにしている。2020年は世界163カ国(世界人口の99.85%をカバー)を対象として、「人としての基本(BASIC HUMAN NEEDS)」「生きがいの基盤(FOUNDATIONS OF WELLBEING)」「やりがい(OPPORTUNITY)」の3分野について、合計50項目のクライテリアに沿った評価を、約8万件のデータを活用して分析、ランキング化した。

 

SPIの項目とSDGsの17目標
SPIのインデックス項目とSDGsの17目標

 

 その結果、2020年はコロナウイルス感染発生の影響にもかかわらず、世界全体の社会改善度は少し前進した。2011年からの10年でみると、インデックスは60.63から64.24へと3.61と緩やかに改善している。しかし、SDGsが目標とする2030年の達成には到底不十分という。

 

 さらにコロナウイルスの影響は、今後、じわじわと経済社会全体に長引き、広がるとみている。国別でみると、この10年間で95%に相当する155カ国のスコアが、1ポイント以上改善した。5%以上の改善を示したのは、69カ国。3か国は下落した。

 

 各項目の改善度では、 栄養摂取や基本医療を受ける権利は84.63ポイントと、もっとも改善した。次いで、避難の確保(77.09)、水と衛生の確保(74.72)、基本的知識へのアクセス(75.18)などが高いスコアとなった。一方、個人の権利は60.09で6.42ポイントの低下、特に低下分の80%は2016~20年の直近に起きている。社会的弱者の社会での居場所を確保する包摂性(Inclusiveness)は39.25で3.48ポイント劣化した。

 

 項目別で最も低い改善スコアしか上げられなかったのは、環境の質(Environmental Quality)。Inclusivenessを下回る36.87だった。気候変動対策の遅れや海洋プラスチック問題、健康影響を引き起こす大気汚染等の根本的な対策が依然、進行していないことを示している。

 

国別スコアリング
国別スコアリング

 

 国別のランキングでは、ノルウェー(92.73)がトップ。次いで、デンマーク(92.11)、フィンランド(91.89)、ニュージーランド(91.64)、スウェーデン(91.62)の順。北欧勢が上位5カ国中4カ国を占めている。日本(90.14)で13位。SPIはスコアによって各国をTier1からTier6までに分類しており、日本は辛うじてTier1に入った。米、英、仏等はTier2だった。

 

 SPIのスコアを元にSDGsの達成状況をみると、2020年時点では72.52で、15年(71.50)からわずか1ポイントの改善でしかない。この緩やかなペースのままだと、SDGsが目標とする2030年時点でも、76.98ポイント止まり。100%に達するのは2082年までかかるという。さらにコロナウイルスの影響が長期化すると、もう10年先まで延びて、2092年になる。

 

SDGsの達成の見通し
SDGsの達成の見通しと、コロナウイルス感染の影響

 

 SPIの理事でもあるBrace Young氏は「機関投資家はこのレポートをよく読んでもらいたい。各国の社会的パフォーマンスのポジティブ、ネガティブなトレンドを把握して長期的投資に生かしてもらいたい。社会的要因の改善には公的政策の影響が大きい。しかし、投資家も効果的な変化を導き出す役割を果たせる。資本市場は政策当局にシグナルを送り、政策転換のインセンティブを与えることができる」と指摘している。

 

 機関投資家が、社会的格差や摩擦を解消しようとしない国の国債投資を控えて、国家歳出の使途を社会や人に振り向けるよう政策転換のインパクトを当局に与えることを求めている。

https://www.socialprogress.org/assets/downloads/resources/2020/2020-Global-SPI-Findings.pdf