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国内最大のCO2排出企業「JERA」、2050年CO2排出量実質ゼロ目標を発表。主力の火力発電の燃料をCO2フリーのアンモニアに転換。再エネにも力(RIEF)

2020-10-14 13:47:01

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   世界最大級の火力発電所を保有するJERAは、2050年に内外の事業からのCO2排出量を実質ゼロとする目標設定を発表した。非効率な既存の石炭火力発電を2030年までにすべて廃止するとともに、火力発電の燃料をCO2フリーのアンモニアや水素に段階的に切り替えることで、ゼロエミッションを実現するという。洋上風力発電等の再エネ電力にも力を入れるとしている。

 

 (上図は、「ゼロエミッション」化の軸となるアンモニアの製造・調達の流れ)

 

 JERAは東京電力ホールディングスと中部電力がそれぞれのの火力発電設備を集中させて、折半出資で2015年に設立された。現在、日本の電力生産の約3割分を供給している。発電の主力は火力発電で、年間のCO2排出量は約1億4900万㌧(2018年度)で、日本全体の総排出量の13%を占めており、日本最大のCO2排出企業だ。

 

 今回公表した「ゼロエミッション2050」計画では、①再エネとゼロエミッション火力の相互補完②国・地域に最適なロードマップの策定③スマート・トランジションの採用ーーの3つのアプローチを設定した。このうちもっとも重点を置くのが、①の主力発電設備の火力発電の「ゼロエミッション火力化」だ。

 

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 先に経済産業省が公表したように、亜臨界圧火力や超臨界圧火力等の非効率な火力発電所を2030年までに全廃する一方、継続事業として維持する超々臨界圧火力(USC)について、燃料にCO2フリーのアンモニアの混焼を段階的に進めていく。混焼率は2030年代前半で20%とし、40年代を通じて比率を徐々に引き上げる。発電所のリプレースとともにアンモニア専焼に切り替えるという。

 

 また水素も活用し、2030年代から本格運用を開始する。40年代には水素混焼率を引き上げる。2050年時点でも専焼化できないUSC発電所については、オフセットを利用するか、あるいはCO2フリーLNG等の活用で実質ゼロの実現を目指す。

 

 燃料転換の中心となるアンモニア製造の工程は次のようになる。海外で調達した天然ガスをまず酸素で燃焼させて、水素とCOに変換する。このCOを触媒で変換したCO2を分離して、水素と窒素を生成。この水素と窒素からアンモニアを合成する。製造工程で発生するCO2はCCUS等の技術で回収する。

 

 水素そのものを燃料とすることも可能だが、大量に製造するには、輸送上の問題がある。輸送に際しては液化が必要になる。この点で水素の場合、液化コストや安定性に課題がある。また価格もすでに市場商品となっているアンモニアは比較的低価格で調達できるメリットがある。

 

 JERAのロードマップでは、水素の利用も選択肢に入っているが、現時点ではもっとも経済面、技術面で利用可能性の高いアンモニアを主力燃料とする考えだ。またアンモニア合成の前段階での水素製造については、天然ガス以外に、水力発電等の再エネ電力を電解して水素を取り出す「グリーン水素」技術の応用も想定している。

 

 同社では「化石燃料使用の火力発電は、日本の電力需要の約8割を支える一方で、国内のCO2総排出量の約4割を占めている。低炭素社会の実現には火力発電からのCO2排出量削減が欠かせない」と指摘している。

 

https://www.jera.co.jp/information/20201013_539