HOME |2019年の台風19号で決壊した長野・千曲川の復旧工事で、工事担当の大林組が約1万3000カ所の施工不良で再工事。同社は「経験者不足」を理由。サステナビリティ方針と矛盾(RIEF) |

2019年の台風19号で決壊した長野・千曲川の復旧工事で、工事担当の大林組が約1万3000カ所の施工不良で再工事。同社は「経験者不足」を理由。サステナビリティ方針と矛盾(RIEF)

2021-02-17 14:25:24

大林組が担当した工事区間で、“手抜き”が見つかった個所=日経Pより

 

 2019年10月の台風19号で、長野県の千曲川の決壊護岸の復旧工事を担当した大林組が、約1万3000カ所の施工不良を指摘され、国土交通省北陸地方整備局から全面やり直しを命じられ、再工事を始めたことがわかった。大林組は工事担当者に河川工事の経験者がいなかった等と説明した。同社はサステナビリティ方針の中で、「責任あるサプライチェーンマネジメントの推進」や「コンプライアンスの徹底」を掲げているが、「口約」だけで、実行が伴わなかったことになる。

 

 (写真は、大林組が復旧工事を担当した箇所。「日経コンストラクション」誌より)

 

 各紙の報道によると、大林組による復旧工事が行われたのは、千曲川が決壊した同県東御市内の工区。長野県に代わって国が復旧工事を進めている。

 

 同社が担当した工事区間で、2か所、112mにわたる部分で基礎工事が行われていなかった。また、のり面のブロックの修復ではブロックを埋め込むためのコンクリートが十分に入っておらず、空洞になっているところが4348か所見つかった。ブロックの段差やすき間などの施工がずさんな部分も9123か所で確認されたという。



 このため北陸地方整備局は、昨年末に大林組に対して、今年の1月8日までに原因の究明や改善方針を提出するよう求めた。大林組は、工事の不具合が多数見つかった点について、同整備局に対して、現場に配置した技術者や下請け会社の作業員に河川工事の経験者がいなかったこと等を主な原因として報告したという。

 

 配置した技術者と作業員が共に経験不足だったうえ、施工を急ぐあまり品質管理に緻密さを欠いたことも原因としている。また、修復工事の設計段階からミスがあったとも説明しているという。要するに「ずさん」な工事であり、「ずさん」な管理ということだ。

 

 同社では今月9日、再施工に着手した。作業に当たって、元請けの技術者の総数を7人から22人に増やしたほか、5人の河川工事経験者を新たに配置した。以前は2人だった派遣社員の起用をやめ、自社社員で担当する。下請け会社からは河川工事経験者を34人、動員する。

 

 再施工の費用は、当たり前だが大林組の負担とし、同年6月上旬の完成を目指すとしている。当初の完成予定の3月19日から約3カ月遅れとなる。発注した国土交通省北陸地方整備局も、工事の段階確認の頻度を大幅に引き上げるなどの体制をとり、監督体制を強化するとしている。

 

 大林組はHPにおいて、同社の事業に関する品質管理の向上を確認する品質マネジメントシステム(QMS)構築のためISO9001に基づいた体制整備をしていると公表している。しかし、今回の不手際は明らかに同社の工事品質の欠落によるものと言わざるを得ない。しかも、HP上では今回の不具合についての説明は一切しておらず、情報開示のお粗末さも露呈した格好だ。

 

 同社はESGへの取り組みとして、「品質の確保と技術力の強化」のほかに、「責任あるサプライチェーンマネジメントの推進」「コンプライアンスの徹底」「環境に配慮した社会の形成」等を掲げている。またグリーンボンドやサステナビリティボンドも発行している。投資家は同社の取り組み実態を精査する必要があると思われる。https://www.obayashi.co.jp/sustainability/esg.html

 

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00142/00946/

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00117/00077/?SS=imgview&FD=1456021402

http://kyoto-seikei.com/hp/2020/12/31/%E5%8D%83%E6%9B%B2%E5%B7%9D%E6%B1%BA%E5%A3%8A%E7%81%BD%E5%AE%B3%E5%BE%A9%E6%97%A7%E5%B7%A5%E4%BA%8B%EF%BC%9A%E8%AD%B7%E5%B2%B8%E5%B7%A5%E3%81%A7%E6%89%8B%E6%8A%9C%E3%81%8D%E3%83%BB%E5%A4%A7%E6%9E%97/