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伊藤忠、水素ビジネス大手の仏エア・リキードと、国内での大規模水素プラント製造、燃料電池車(FCV)普及に向けた水素バリューチェーン展開で、協業を発表(RIEF)

2021-02-26 18:13:39

Airliquid001キャプチャ

 

 伊藤忠商事は26日、仏エア・リキード、伊藤忠エネクスと連携し、国内に大規模な水素製造プラントを建設するほか、水素を製造する上流から、販売・活用の下流までを一貫して網羅する「水素バリューチェーン」を構築する協業で合意したと公表した。水素プラントは2020年代半ばに中部地方に建設する。提供する水素は、水素エネルギーを活用する燃料電池車(FCV)等へのリテール市場への水素燃料の供給を目指す。

 

 (写真は、日本エア・リキードが国内で展開する水素ステーション)

 

 伊藤忠が協業するエア・リキードは工業用ガス世界最大手で、水素ビジネスでも先行している。伊藤忠とエア・リキードは、日本政府の支援を受けて、水素サプライチェーンをグローバル市場でさらにスケールアップするための検討も進めるとしている。「2050年ネットゼロ」社会構築に向けて、電気自動車(EV)主導のモビリティ戦略を進めるEUに対抗する形で、水素主導のFCV市場の普及を目指すことにもなる。

 

 伊藤忠らが建設する水素プラントは、エア・リキードが米国ネバ他州で建設中の世界最大級の液化水素プラントとほぼ同規模の大型プラントになる見通しという。水素は天然ガス(LNG)から製造する。製造段階で発生するCO2は回収し、飲料品向けの発泡剤やドライアイスなど工業用途で外部販売する。

 

 エア・リキードは、日本法人によってすでに日本国内で13カ所の水素ステーションを展開している。今回、伊藤忠と連携することで、大都市圏を中心に水素ステーション事業網をさらに拡大することで、モビリティー市場を含む産業向け水素市場の拡大に貢献するとしている。

 

 現在のところ、FCVの国内での普及状況は、約4000台と限られている。FCV車自体の価格の高さとともに、燃料を供給する水素ステーションが日本エア・リキードの分を含めて日本全体で137カ所と少ないことがネックとなっている。

 

 伊藤忠らは、政府の「2050年ネットゼロ」宣言後に、経済産業省が打ち出した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」等で、FCV推進をうたっていることから、トラック等の商用車利用を含めて、今後、FCV市場が拡大するとみて、水素ビジネスを拡大する計画という。

 

 水素価格は現在、LNGから製造する液化水素で、CO2の回収費用も含めて1kg当たり1100円前後で取引されているという。これを1000円以下で提供することを目指すとしている。現状価格での水素を用いた発電コストを電力換算(1kW時)すると約52円で、一般電力の約2倍に相当する。

 

 同じく水素戦略を進める欧州での水素価格は1kg当たり200~400円と日本の4分の1ほどという。原料となる天然ガスを全量輸入に頼る日本の場合、2020年の平均価格は100BTU当たり8.53㌦だが、欧州では3.24㌦と3分の近くも安い。欧州では一部、北海等にガス田を持つためとされる。

 

 ただ、欧州では再エネ電力から水素を製造する「グリーン水素」の価格も、1kg当たり300~700円で製造可能とされる。日本の天然ガス原料の「ブラウン水素」よりも安い。欧州では再エネ価格が日本より安いことが水素価格にも反映しているわけだ。結局、日本の再エネ政策の「失敗」が、次世代の水素価格の競争力低下にも影響していることになる。