HOME10.電力・エネルギー |水素エネルギー開発競争、再エネからの「グリーン水素」2050年には85%の価格下落でkg当たり1㌦に。化石燃料からの「ブルー水素」を10年以内に凌駕。世界中の事業計画を分析評価(RIEF) |

水素エネルギー開発競争、再エネからの「グリーン水素」2050年には85%の価格下落でkg当たり1㌦に。化石燃料からの「ブルー水素」を10年以内に凌駕。世界中の事業計画を分析評価(RIEF)

2021-04-12 07:48:24

Greenhydrogen001キャプチャ

 

 グローバルなネットゼロに向けた期待が高まる水素エネルギーについて、再生可能エネルギーに基づく「グリーン水素」が2050年までに、天然ガス等の化石燃料原料の水素製造よりも、価格が下落、50年にはkg当たり1㌦になるとの分析結果が公表された。太陽光発電コストの低下が促進し、今後30年間で「グリーン水素」価格は現状より85%低下することになる。

 

 推計は環境・エネルギー分野の専門機関BloombergNEFが実施した。調査では世界の28市場の627の水素製造プロジェクトを対象とした。それらをBNEFが開発した「Hydrogen Project Valuation (H2Val)Model」で分析した。その結果、再エネ電力に基づく水素の価格は250年には、1kg当たり1㌦($7.4/MMBtu)を下回るとの試算となった。このうち18市場では、天然ガス原料の水素製造よりも安くなった。

 

 BNEFのこれまでの推計に比べても、グリーン水素の2050年価格は17%低く、2030年価格は13%低いという。グリーン水素コストは今後10年間でkg当たり2㌦以下に低下し、50年までにさらに半減するとしている。

 

 BNEFはこうした水素価格のドラマチックな低下は、世界全体のエネルギーマップを大きく書き換えることにつながると予想している。ただ、再エネ、水素製造の技術を順調に推進するには、現行の水素製造コストを低下させるために政府による技術開発支援の継続が不可欠としている。

 

 日本をはじめいくつかの国は、天然ガス等の化石燃料を原料とし、発電過程で生じるCO2をCCUSで回収利用貯留する「ブルー水素」事業に力を入れている。しかし、BNEFはこうした「ブルー水素」事業は2030年までに、「グリーン水素」の価格下落によって、ほとんどの国で経済的に太刀打ちできなくなり、「現在、石炭火力発電が直面しているのと同じように無意味になってしまう」と警告している。

 

 グリーン水素にとっての最大の課題は太陽光発電等の敷設スペースを確保できるかという点だ。太陽光発電自体の価格は、グローバルにはすでに化石燃料発電よりも低下(日本では別だが)している。今後、2050年までにさらに40%の低下が見込まれるとした。太陽光発電のモデュール製造価格の下落、発電効率の向上、両面パネルの開発等で発電量当たりの価格下落が引き続き進むためだ。

 

 BNEFの水素アナリストのMartin Tengler氏は「世界経済の少なくとも33%の地域では、完全にクリーンエネルギーだけでエネルギー需要がまかなえる状況になる。化石燃料には1セントも支払わなくて済むのだ」と指摘している。

 

 こうした技術展望を踏まえて、すでにEUは昨年、グリーン水素戦略を立ち上げている。個別国でも、スペイン、オーストラリア、フランス、サウジアラビア等は大規模なグリーン水素戦略を推進している。中国の太陽光発電事業者のLONGi Green EnergyはLONGi Hydrogen Technology Coを設立、中国を中心にアジア市場でのグリーン水素開発に動き出している。

 

 日本では国内の太陽光発電や風力発電と水素製造を結びつけるグリーン水素プロジェクト自体がほとんどない。商社主導で海外で余剰となりそうな、石炭・天然ガスから開発する「ブルー水素」輸入にシフトしている。BNEFの技術見通しを踏まえると、日本のこれらのプロジェクトは、将来コストへの視点を欠いており、「ブルー」どころか、やはり「ブラウン事業」ということになる。

https://www.greencarcongress.com/2021/04/20210407-bnef.html