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欧州年金基金が風力発電事業へ投資、低金利下で高利回り目指す(Reuters)

2012-08-15 20:15:54

焦点:欧州年金基金が風力発電事業へ投資、低金利下で高利回り目指す
8月14日、欧州の年金運用各社は高いリターンを求め、銀行や他の投資家が高リスクとして敬遠している風力発電事業への出資に動いている。写真は4月、ローマ近郊で撮影(2012年 ロイター/Max Rossi)


[コペンハーゲン 14日 ロイター] 欧州の年金運用各社は高いリターンを求め、銀行や他の投資家が高リスクとして敬遠している風力発電事業への出資に動いている。

これまで年金基金は低リスク戦略を取り、国債などへの投資を選好してきた。ただ、欧州債務危機により状況は一変し、主要国の金利が低下するなか、国債に代わる投資先は非常に限られている。

欧州連合(EU)が2020年までに電力全体における再生可能エネルギーの割合を20%にまで増加させ、温室効果ガスの削減や化石燃料への依存度低下を実現するには、EU域内のエネルギーインフラ整備に向け多額の投資が必要になる。

一方、新たな資本規制で投資のリスク抑制が求められる銀行は、エネルギー関連事業への融資に消極的だ。

風力発電事業、とりわけ、海外での事業は、建設がコストが高く、維持費もかかる。規制面での不確定要素があるほか、電力網への接続という技術的な問題も予想される。

それにも関わらず一部の年金基金は、プロジェクト稼働後の20─30年という長期的な安定収入を期待し、風力発電事業への出資を進めている。

デンマークの国営の総合エネルギー会社であるDONG Energy DOENRY.ULは、デンマーク、英国、および、ドイツの沖合で進めている洋上風力発電プロジェクトの出資を募った。その結果、デンマークのPensionDanmarkとPKA、オランダのPGGMなどの年金運用会社の事業参加が決定した。さらに、デンマークの玩具会社レゴや日本の丸紅(8002.T: 株価, ニュース, レポート)もこの事業に出資する。

61万8000人が加入し1250億クローネ(210億ドル)の資産を運用するPensionDanmark(デンマークの労働者年金)のマネージングディレクター、Torben Moger氏は「こうした動きは今後、多くの年金基金の標準になるだろう」と指摘。国債投資のリターンがあまりにも低いことから、年金基金は国債に代わる投資先の検討を余儀なくされている、との見方を示した。

PensionDanmarkのDONG Energyへの投資は現在45億クローネだが、同社のペダーソン氏は、エネルギーとインフラ分野への投資配分を現在の約6%から10%に引き上げるとし、DONG Energyへの投資も拡大する方針を明らかにした。

ペダーソン氏は「今後5年で運用資産は1800億クローネに拡大すると見込んでおり、こうした分野への投資も向こう10年で100億─150億クローネに達する」と述べた。

<魅力的なリターン>

欧州最大の保険会社である独アリアンツ(ALVG.DE: 株価, 企業情報, レポート)は2005年から再生可能エネルギーの分野に13億ユーロ(15億9000万ドル)以上を投資している。投資先の大半はドイツやフランスの風力発電企業だが、フランスおよびイタリアの太陽光発電会社へも出資している。

Allianz Specialized Investments の デービッド・ジョーンズ最高経営責任者(CEO)は、風力・太陽光発電プロジェクトへの投資リターンは約7%で他の資産の運用成績をはるかに上回っているほか、金融市場の変動に影響されないと指摘した。

PensionDanmarkのペダーソン氏も「国債へのリターンを300─500ベーシスポイント(bp)上回るリターンを期待している。一方、リスクは株式よりもはるかに低く、リスクに対するリターンの割合は非常に魅力的だ」との見方を示した。

オランダの年金グループPGGMのインフラ投資部門代表、Henk Huizing氏は「良いパートナーがいれば開発段階からの参加のリスクは受け入れられる水準に低下する。さらに初期参入の利もある」と述べた。PGGMは、インフラ関連投資のうち15─20%を再生可能エネルギー分野へ振り向けている。

DONG EnergyのMorten Buchgreitz氏は、複数の保険会社が出資に「かなり関心」を示しているとしたうえで、約1000億ユーロの資金を必要としており、保険会社以外からの出資も期待していると語った。

同氏は「北欧の沖合市場だけみても、2020年までに発電容量は現在の4ギガワット(GW)から約10倍の37GWに拡大する必要がある。これを踏まえると、この事業が今後のモデルになることを望んでいる」と語った。

(John Acher記者;翻訳 伊藤恭子 ;編集 宮崎亜巳)

 

http://jp.reuters.com/article/jpnewEnv/idJPTYE87E04320120815