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わが国の公的年金GPIFが 海外インフラ投資に乗り出す。まず、先進国向けに2800億円を出資(FGW)

2014-03-03 13:19:47

GPIFキャプチャ
GPIFキャプチャ わが国の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、日本政策投資銀行(DBJ)及びカナダ・オンタリオ州公務員年金基金(OMERS)と共同投資協定を結び、グローバルなインフラストラクチャーへの投資(インフラ投資)を開始する、と発表した。GPIFは運用資産130兆円を抱える世界最大の公的年金で、今回のインフラ投資では5年間で最大27億ドル(約2800億円)を投じる。
GPIFのこれまでの運用方針は、安全運用を軸とし、流通市場が整備されている債券、株式に限ってきた。ただ、世界の年金基金などは、伝統的な債券・株投資に加えて、新興国を中心に需要が高まっているインフラ投資も拡大している。インフラ投資は、長期にわたって安定した利用料収入が期待されるほか、株式市場等と異なり、価格変動の影響を受けにくい等の利点もある。金融市場の変動との相関性も薄いことで、投資ポートフォリオの安定にも資する、と指摘されている。

 

また途上国等のインフラ事業への資金供給は、グローバルにも要請されており、CSR(企業の社会的責任)の観点からも期待もある。今回のGPIFのインフラ投資は、先進国ものをターゲットとしているが、GPIFがインフラ投資に踏み出したことは、グローバルなインフラ市場を活性化する長期的な効果も期待される。GPIFは優良なインフラ事業を選別する必要があることから、OMERSやDBJとの提携を結んだ。

 
OMERSはカナダで最大規模の公的年金で、これまでもインフラ投資の実績がある。インフラ投資の収益率は11.0%(2009‐13年の年率,現地通貨ベース)をあげている。またDBJとの共同出資による投資信託には、日本のニッセイアセットマネジメントが運用担当として参加し、OMERSが選定した投資先リストから案件を選別して投資先を決める役割を担う。その際の運用アドバイスには、年金コンサルティングのマーサー・インベストメンツも加わるというから、二重三重のサポート体制を組んで、始動する念の入れ方だ。

 

5年間で2800億円の投資は、GPIFの運用総額からすれば、わずか0.2%程度でしかない。その意味で今回の投資決定は「練習」のようなもの。年金運用業界では、今回の共同投資の評価を経て、今後、GPIFがインフラ投資の範囲を途上国に広げるほか、インフラ投資だけでなく海外のプライベート・エクイティ(PE)や海外での不動産投資などにも範囲を広げる期待も出ている。

 

ただ、どの市場にも特有のリスクがあることを忘れてはならない。公的年金としてのリスク・リターンをしっかり把握した長期のマネジメントを持続できるかどうかがかぎだ。国民の年金原資だけに、くれぐれも運用業者主導で「腐ったインフラ」をつかまされないように望みたい。

 

当面の投資対象インフラ事業は、先進国の電力発送電、ガスパイプライン、鉄道などとみられる。インフラ投資では、安定したインカムゲインが見込まれることから、基本ポートフォリオ上は「外国債券」に位置付け、自家運用の一つとして管理するとともに、共同投資協定に基づき、DBJ及びOMERSの投資経験を吸収し、GPIFの投資能力の向上やリスク管理の高度化を図る、としている。

http://www.gpif.go.jp/topics/2013/pdf/gpif_launches_infrastructure_investment_program_ja.pdf