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グリーンボンド発行 今年第一四半期72億㌦。多通貨分散と低格付け債発行で市場確実に拡大へ(CBI)

2015-05-06 22:34:38

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greenbondpic%201(1)2015年1-3月期は44のグリーンボンド、額にして72億ドルのグリーンボンドが発行された。1月の控えめな立ち上がりから毎月発行額が増加。3月の発行額は1月の3倍に上った(Climate Bonds Initiative)。

今年は再びグリーンボンド発行額が過去最大となる見込みだが、年末にパリでのCOP21を予定しており年後半にい発行が集中する模様だ。

 

控えめな1‐3月期だが、発行額増加の見込み

より強靭で流動性なグリーンボンド市場形成のためには発行額の増加に加え、通貨や格付けの分散が必要である。1‐3月期は11の通貨、発行体の格付けもAAAからB-と分散傾向が顕著となった。

1‐3月期は新興国特に中東、中国、南アジアでのグリーンボンドへの関心が高まったが、結局実際の発行は2月のインド初のグリーンボンドのみに留まった。

米国地方債市場は水処理施設、グリーン不動産向けの発行が相次いだ。同地方債のその他のグリーンボンドとの大きな相違は、発行体がセカンドオピニオンを受けようとはしない点である。1‐3月期の発行ではセカンドオピニオン付与のグリーンボンドは1件もなかった。

また国際金融機関による発行も引き続き好調だ。通貨分散や発行スキームの多様化により他の発行体の参考となっているほか、及び投資家としてグリーンボンド市場拡大を強力にサポートしている。

 

新興市場:インドが2件の新規発行で、中国に対して先手を打つ

2050年までに新興国の低炭素社会への投資が急拡大する必要があるが、グリーンボンドはその一翼を担うことが出来る。中国はグリーンボンド市場参入1番乗りすると見ていたが、インドは企業のグリーンボンド発行で先手を打った。Yes Bank は再生可能エネルギープロジェクトへの投資目的で100億ルピー(約1億6,150万ドル)のグリーンボンドを発行した。

Yes Bankに引き続きインド輸出入銀行が5億ドルのグリーンボンドを発行した。調達資金は隣接するバングラデシュ、スリランカでの再生可能エネルギーや低炭素交通プロジェクトに充てられる。インドでは2022年までに165ギガワットの再生可能エネルギーによる新規電源開発を政策目標としており、先述のグリーンボンド発行の支援材料となっている。Yes Bankによると700億ドルの債券発行がこの目標達成には必要としており、グリーンボンドの発行余地がかなり存在するということになる。いくらかのロビー活動の末、インド政府はグリーンファイナンス需要を満たすためグリーンボンドの活用に肯定的になり、政府機閍 や開発銀行 に対しグリーンボンド発行を呼びかけている。今年はインドからのさらなる発行が期待できる。

ただし中国の存在も忘れるべきではない。年央に掛けて初のグリーンボンド発行を見込んでいる。

 

通貨分散により機関投資家によるグリーンボンド購入が活発に

グリーンボンドは幅広い投資家に購入機会を与えるため多様な通貨で発行される必要がある。ほとんどは引き続き米ドルもしくはユーロで発行されているが、国際金融機関は小口で通貨を分散させて発行する傾向を強めている。この1‐3月期ではトルコ・リラ、ブラジル・レアル、インド・ルピー等11の通貨で発行があった。オーストラリアの投資家はドイツ復興金融公庫(KfW)のオーストラリアドル建てのグリーンボンド(カンガルーボンド)を購入可能になり、大人気を博した。国際金融機関以外にもWallenstamやVasakronanのスウェーデン・クローナ建て発行にみられるように、国内投資家向けに企業がグリーンボンドを発行するケースも散見される。より強靭で流動性のあるグリーンボンド市場のためにはこの3か月に見られた通貨分散 がさらに進むことが不可欠だ。

 

11の通貨でグリーンボンドが発行され、市場の深化が見られるも、引き続き米ドル、ユーロが支配的greenbondpic%202(1)

投機的格付け:グリーンボンドの多様化により格付け低下

市場深化に必要な高利回り債券発行が拡大している。1‐3月期ではTerraformとPaprecが投機的格付けでグリーンボンドを発行した。これらはイルドコ(yieldco、予測されるプロジェクト収益を基に発行される投資有価証券)や企業等多様な発行体から発行される。

Terraform Power Operating (BB-) イルドコは1月に再生可能エネルギー関連施設の買収資金として8億ドルのグリーンボンドを発行した。昨年成功裏に終わったNRG YieldやAbengoa Greenfieldに続くイルドコによる発行である。フランスのリサイクル会社Paprecが初めてグリーンボンドを発行した。全体では5億2,300万ドル(4億8,000万ユーロ)、1億8,500万ユーロ/2億100万ドル(格付けB-)と2億9,500万ユーロ/3億2,100万ドル(格付けB+)の2つのトランシェからなる。

 

米国地方自治体が発行額を拡大、しかしセカンドオピニオンを取得せず、環境面での有効性があるかは判断が難しい状況が続く

1-3月期にはワシントン(タコマ市)、マサチューセッツ、アリゾナ、インディアナの4州がグリーンボンドを発行した。グリーン地方債の使途は多岐に渡るが、特に水処理施設、グリーン不動産向けが多い。

インディアナ州はシカゴ市やアイオワ州に続き水処理関連のグリーンボンドを発行した。同月に2度に渡る発行となった。今や水処理関連への投資が環境への確かな有効性があるかどうかは用心深く見なければならない課題である。以下はその有効性を確認するための当然の疑問である。例えば水処理施設への長期的投資について、今後の気候変動の影響を受け、その適応が考慮されているか。その施設のエネルギー効率、すなわち温室効果ガス発生量はどの程度か。水質汚染防止条項は往々にして降雨パターン及び量の変化予想を無視している。これは未だに一般的だが改善が強く望まれる点である。需要マネジメント等仍 の選択肢が選べるにもかかわらず従来の投資を行なうことはエネルギー消費増につながるためである。

投資家はこのような水処理施設への環境面での便益を見込んだ投資を、自信を持ってするためには、そのような情報へのアクセスが不可欠である。最近のGreen Bond Principlesの更新では水カテゴリーの表現が「きれいな飲み水」から「持続可能な水資源」に変更された。我々はより詳細な要件及び外部監査モデルを導入する必要がある。

米国の大学でマサチューセッツ工科大学でのグリーン不動産投資の借り換え目的でのグリーンボンド発行に追随する動きが出てきている。今1-3月期にはヴァージニア大学アリゾナ州立大学がそれぞれ9,770万ドル、1億8,200万ドルのグリーンボンドを発行した。しかし水処理施設投資のための地方債と同様、我々は第三者による審査、または最低でも償還期限までの期間に建物のエネルギー効率を向上させる方針及び報告を発行体に求めるべきである。

 

米国の地方自治体・インド企業が主導し、1-3月期の発行額の大半はセカンド・オピニオンを回避

国際金融機関:発行と投資の両面でグリーンボンド市場に貢献、さらに開示内容の質向上も

国際金融機関は1-3月期も2014年同様市場で圧倒的な存在で、総発行額の46.2%を占めた。国際金融機関は引き続き業界の先導役で米ドル以外の通貨での発行を増加させている。例えばKfWは既に複数のグリーンボンドを発行しているが、10億ユーロの グリーンボンド・ポートフォリオ(link is external) 形成計画を発表した。同様に世界銀行の民間部門であるIFC(国際金融公社)も新興市場での5億ドル の新興市場のグリーンボンド投資を宣言し、インド発のYes Bankのグリーンボンド発行を後押しした。

http://www.climatebonds.net/2015/05/1-3%E6%9C%88%E6%9C%9F%E7%B7%8F%E6%8B%AC%EF%BC%9A%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%83%B3%E3%83%89%E7%99%BA%E8%A1%8C%E3%81%AF72%E5%84%84%E3%83%89%E3%83%AB%E3%81%A8%E6%8E%A7%E3%81%88%E3%82%81%E3%81%AA%E7%AB%8B%E3%81%A1%E4%B8%8A%E3%81%8C%E3%82%8A%E3%80%82%E3%81%97%E3%81%8B%E3%81%97%E9%80%9A%E8%B2%A8%E5%88%86%E6%95%A3%E3%81%A8%E4%BD%8E%E6%A0%BC%E4%BB%98%E3%81%91%E5%82%B5%E7%99%BA%E8%A1%8C%E3%81%A7%E6%88%90%E7%86%9F%E5%8C%96%E3%82%92%E7%A2%BA%E8%AA%8D%E3%80%82%E6%96%B0%E8%88%88%E5%9B%BD%E5%82%B5%E3%80%81%E5%9C%B0%E6%96%B9%E5%82%B5%E3%81%AE%E7%99%BA%E8%A1%8C%E3%81%8C%E6%B4%BB%E7%99%BA%E3%80%82q1-rpt-japanese