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米公的年金基金、世界株安で脆弱さ露わに。リスク性資産への積み立て不足顕在化。日本のGPIFは大丈夫?(Reuters)

2015-09-02 18:20:11

NYSEキャプチャ

[ニューヨーク 1日 ロイター] – 先週の世界的な株価の乱高下は、ここ数年でリスク性資産を買い増してきた米国の公的年金基金の脆弱性を露わにしそうだ。

米連邦準備理事会(FRB)のデータによると、米国の公的年金の総資産規模は4兆ドル近くに達し、その70%超が株式やコモディティ、ヘッジファンドといったリスク性資産で運用されている。イリノイ州のように多額の積み立て不足に陥っている州の年金基金は、さらに不足額が大きくなりそうだ。

 

金融危機以来、多くの公的年金基金は野心的な想定利回りを達成するために高リスク資産への投資を増やしてきた。全米州退職金管理者協会(NASRA)が5月に公表した報告書によると、大半の基金の想定利回りは7-8%だ。

 

年金基金はまた、今後数年高い利回りが見込めない米国債など、安全資産の比率を落としている。

 

業界の専門家によると、大半の主要年金基金は「ボラティリティ・マネジメント」や「ダイナミック・アセット・アロケーション」など、市場全体が売りにさらされた際に損失を一定限度に食い止めるための戦略を採用していない。

 

<外国株の組み入れ拡大>

過去25年で米国株と債券の比率を減らして外国株を増やす変化も起こったため、最近の欧州や新興国の株価急落による影響はさらに大きくなりそうだ。

 

CEMベンチマーキングの最新データによると、公的年金基金による株式の直接的な組み入れ比率は1992年の52%から2014年末には49%に下がったが、国際株式の比率は4%から27%に増えた。

 

債券は40%から25%に減少し、プライベートエクイティが2%から10%に、コモディティなどの実物資産は7%から11%に、それぞれ拡大した。1992年には年金と無縁だったヘッジファンドは現在5%を占める。

 

金融危機によって多くの年金基金は積み立て不足に陥っており、想定利回りの達成がいやが上にも重要性を増している。ウィルシャー・コンサルティングの2014年の調査によると、公的年金基金は債務に対し平均78%の資産しか積み立てていない。1990年にはこの比率が99%だった。

 

しかもこれは7-8%という想定利回りを用いて割り引いた数字で、より実勢を反映する米30年国債利回りの3%を適用すると、積み立て不足はさらに大きくなると指摘されている。

(Edward Krudy記者)

 

http://jp.reuters.com/article/2015/09/02/us-pension-stocks-idJPKCN0R20NY20150902?sp=true