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GPIF、株式への直接投資が可能に。厚労省が今春にも法案提出へ。不動産やインフラ等への投資も解禁を検討(WSJ) 何でもアリだな。損しても国民にツケ回せばいいし・・・

2016-01-19 01:07:38

GPIF2キャプチャ

 

 【東京】日本政府は、約135兆円の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に株式の直接売買を認める法案をまとめている。この動きは、市場におけるGPIFの役割に関する議論を引き起こしている。

 

 GPIFは現在、株式運用を外部機関に委託している。厚生労働省は今春にも、株式直接投資を解禁する法案を国会提出する方針だが、政府関係者らによれば、法案の通過は今年の遅い時期になる可能性がある。

 

 株式直接投資が解禁されれば、保守的な投資家であるGPIFは他国の年金基金や政府系ファンドのような機関に向け、改革を一歩進めることになる。安倍晋三首相は、国内金融市場の再活性化とコーポレートガバナンス(企業統治)の改善に向け、改革に意欲を見せてきた。

 

 GPIFの水野弘道・最高投資責任者(CIO)はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し「GPIFは運用会社だけでなく企業と建設的に関わることにより、日本経済に一層貢献できる」と述べた。「日本最大の資産保有者として、われわれは企業・投資家間においてガバナンス改善という前向きな連鎖反応を生み出すことができる」とも語った。

 

 GPIFキャプチャ

 

 ただ、一部の企業幹部や政治家は、GPIFの直接株式投資について、個別銘柄の選別を通じて市場にゆがみをもたらしたり、政治家が企業への影響力を行使する手段として用いられたりする恐れがあるとして、法案に懸念を示している。

 

 かつてGPIFの運用委員を務めた慶應義塾大学大学院経営管理研究科の小幡績准教授は「政治の介入を最も懸念している」とした上で、「理論的にインハウス(自家)運用派だが、日本の状況を見ると運用に関しては最も未成熟な国であり社会であると考えている」と述べた。

 

 安倍政権はGPIFを利用して金融市場に影響を与えているとしてすでに批判されている。GPIFは2014年、運用資産における株式の配分比率を倍増させたが、一部の投資家はこれを「価格維持操作」と批判している。

 

 GPIFの2015年7-9月期の運用実績が約8兆円の赤字となったことも批判を招いた。日本株の下げが続けば、今四半期はさらなる損失を被る可能性が高い。日経平均株価は年初来の下落率が10%を超えており、18日も前営業日比1.12%下落した。

 

 水野氏は、株式の自家運用によって外部機関への運用委託手数料を削減できるほか、市場に関するさらなる情報を得られるようになると指摘している。

 

 水野氏はGPIFの影響力をめぐる懸念を和らげるべく、個別銘柄の保有比率は5%未満に制限される可能性があるとしている。この場合、保有する個別株の公表は求められない。同氏はまた、合議制の委員会導入を含むGPIFのガバナンス改革が、政治の介入をめぐる懸念に対処するだろうと語った。

 

 15年9月30日時点で、GPIFは運用資産の43%を国内株式と外国株式に振り向けており、国内市場に上場している株式の約7%を保有していた。

 

 サントリーホールディングス(HD)の新浪剛史社長は、企業に資産の効率的利用を促す上で、GPIFは他の投資家を主導できるとの見解を示し、「大量の資金を抱える日本企業には一層厳しいコーポレートガバナンスが必要だ」と指摘。また、資金を投じる人は顧客でもあるため、他の投資家はそうした主導役として当てにできないと述べた。

 

 一方、日本経済団体連合会(経団連)は、GPIFへの株式直接投資の解禁に消極姿勢を示している。

 

 経団連の阿部泰久常務理事は、WSJに対し「経済界は、GPIFがマーケットの価格形成や民間の投資行動をゆがめるだけでなく、議決権行使や個別銘柄の選択・売買を通じて民間企業の経営に介入してくることを強く懸念している」と述べた。GPIFによる株式の自家運用には反対だという。

 

 厚労省が法案の文言調整を進める中、自民党の一部議員はこうした懸念から法案に警戒感を示している。

 

 事情に詳しい関係者によると、ひとつの案では、GPIFは自ら積極的に株式を選別するのではなく、ベンチマークに連動する「パッシブ」ファンドへの投資のみが可能となり、直接保有する株式の議決権は持たない。議決権は代理行使サービス機関、ないし国内信託銀行に委託される可能性がある。この案は批判を抑える効果があるかもしれないが、GPIFはコーポレートガバナンスの改善にほとんど寄与できない。

 

 厚労省は、株式以外の資産への投資に関するGPIFの規則改正も検討している。GPIFは現在、不動産やインフラ、プライベートエクイティ(PE)などへの直接投資が禁止されている。

 

 GPIFの水野氏は法的規制を理由に、欧州の空港やロンドンの高級不動産などへの投資機会を見過ごさざるを得なかったと述べた。また、GPIFが不動産などの資産に投資していれば、最も魅力的な機会は総じて海外になるだろうとした上で、「海外の同業はわれわれに高い期待を抱いていると感じる。彼らはGPIFの洗練性や積極性が高まれば、日本のみならず世界の資本市場に恩恵をもたらすと信じている」と語った。

 

http://jp.wsj.com/articles/SB11810945248234553346004581485880222600832