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トヨタ自動車 8日から国内工場のすべての自動車組み立てラインを停止。グループ工場の爆発事故で部品供給遅れが原因。サプライチェーンリスクへの対応の不備露呈(RIEF)

2016-02-01 14:43:15

aichiキャプチャ

 

  トヨタ自動車は1日、愛知製鋼知多工場爆発事故の影響で、国内工場の全ての自動車の完成車組み立てラインの稼働を8日から13日まですべて停止すると発表した。

 

愛知製鋼(愛知県東海市)はトヨタグループの一員で、本社は愛知県東海市。事故を起こした知多工場は特殊鋼条鋼を主に、エンジンなどの自動車部品用の特殊鋼を生産している。先月8日午後11時45分ごろ、鉄を溶かすための加熱炉が爆発した。事故で炉が損傷し、工場内の壁が崩れ落ちるなどの被害が発生した。けが人はなかった、とされる。

 

 愛知製鋼は、事故後の同月11日、ラインの復旧に一ヶ月以上かかる見通しと発表した。トヨタなどへの資材供給については「代替ラインや他社への生産委託などで供給が遅れないようにする」と説明していた。

 

 しかし、その後、復旧作業が遅れ、3月末までかかる見通しになったという。このため、資材の供給不足は避けられない状況になり、トヨタは自動車生産ラインを供給体制が整うまで、工場の操業を止めることにした。

 

 不足する部品・資材は、他社でも代替生産が可能な素材で、神戸製鋼所(神戸)や大同特殊鋼(名古屋)に生産を依頼しているという。だが、トヨタが必要とする分量が多く、供給が追い付かないという。

 


 トヨタの自動車生産ラインが全て止まるのは、2011年の東日本大震災以来。愛知県内にある直営の4工場ほほか、トヨタ自動車東日本、トヨタ自動車吸収、トヨタ車体、豊田自動織機、ダイハツ工業のグループ5社の11の工場も停止する。また日野自動車でトヨタから受託生産をしている工場も止まる。

 

 生産ラインの再開は、今月15日の予定。トヨタはすでに事故の影響を踏まえて、1日から1週間、国内の組み立て工場での残業と休日出勤をやめることを決めていた。

 

 今回のグループ会社の事故は、「地震に似た揺れや爆発音があった」と指摘されているほか、同工場では以前にも同様の爆発事故を起こしたとの情報もある。トヨタのサプライチェーン管理が妥当だったのかという論点も浮上している。http://ringosya.jp/aichiseikou-bakuhatsujiko-17954

 

 事故原因については明らかにされていないが、グループ会社の一工場の事故で、生産ラインが止まってしまう事態は、トヨタのリスク管理上の課題を問うに十分な事態でもある。トヨタでは、部品の在庫を極力持たず、必要な時に必要な分だけ調達する「トヨタ生産方式」をとっているが、平時で機能するこうした方式も、非常事態に陥ると機能しないことを立証した形だ。、

 

 また事故自体はトヨタ本体ではなく、取引先の問題である。また事故を完全にゼロにするのは、どの企業でも困難な課題だ。したがって、サプライチェーンに事故やトラブルが発生した場合に、生産方式全体の損害を最小限にとどめるリスク管理力の強化とともに、非常時にも配慮した機動的な「生産方式」への切り替えが必要だ。

 

 事故から一ヶ月近く立ってから、工場の操業停止という判断を出すという今回のトヨタの判断を見る限り、在庫を減らし、取引先も絞り込むという、トヨタ方式の欠陥が露呈したことは間違いない。単に欠陥というよりも、この程度の事故で全工場を止めざるを得ない状況に陥ったことは、トヨタ方式自体が「時代遅れ」になっている可能性もある。

 

 一連の減産で、10万台程度の生産が遅れる見通しという。米国ならば、それだけで消費者からブーイングが殺到し、場合によると損害賠償訴訟を提起されかねない。

http://newsroom.toyota.co.jp/jp/detail/11051611/