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サステナブルファイナンス大賞キーパーソンに聞く④大和証券デッド・キャピタルマーケット部の代田英展部長、徳田健課長代理。「社会貢献型債券を開発」(RIEF)

2016-02-24 20:41:37

daiwaキャプチャ

 

  大和証券は、サステナブルファイナンス大賞の優秀賞を受賞しました。途上国の子供たちが感染症にかかるのを予防するワクチン債をはじめとして、社会貢献型債券を個人投資家などに向けて販売してきた活動を評価されました。デッド・キャピタルマーケット部の代田英展部長(写真左)と同部海外オリジネーション課兼オリジネーション二課上席課長代理、徳田健氏のお二人に聞きました。

 

――ワクチン債を手掛けたきっかけは。

 

代田:2000年代の半ばくらいに、投資において経済的リターンだけではなく、ESGなど、何か意義のあるものが大事だとの風潮が高まってきました。そうした中で、われわれは元々個人投資家様向けに外貨建て債を販売していた経緯があったので、経済的リターンと社会貢献を両立する仕組みを提供することで、個人投資家様に対して自分のお金が社会の役にも立っているという実感を得ていただくことができるようになるのではないかと考え始めました。

 

徳田:その第一号が、2008年3月に販売した世界銀行が財務マネージャーを務める「予防接種のための国際金融ファシリティ(The International Finance Facility for Immunisation : IFFIm)」の2年物の南アフリカランド債建て債券でした。この債券を通じ、1万件以上の個人投資家様から17億ランド(約213億円)の資金が集められ、世界中の子どもたちのための予防接種プログラムに活用されました。投資した資金が社会貢献に直結する社会貢献型債券に対する個人投資家様の高い関心が確認できたため、その後も商品提供を継続してきました。

 

――インパクトインベストメント(責任投資)ですね。

 

代田:まだ、そうした呼び方もそれほど広まっていませんでした。最初に大和証券が始めた当時、社会貢献型債券市場のシェアは弊社が先駆者として100%でしたが、次第に他社の参入もどんどん増え、現在、弊社の市場シェアは57%まで低下しています。シェアが低下するということは、それだけ市場規模が広がったわけで、実際、社会貢献型債券の累計販売額も1兆円を超えています。社会貢献型債券市場に意義を見出して発展させていこうという金融機関や投資家様のコンセンサスが得られたのではないかと思っています。

 

 daiwaキャプチャ

 

――ワクチン債などの社会貢献型債券に投資する投資家層はどういう人々ですか。

 

代田:一般的にこうした個人向けの外貨建て債を購入する個人投資家層は60歳以上の熟年層が多いですが、社会に対する関心が高い50代、60代の女性や40代といった若い層からの反応も大きかったと思います。また、医師など医療関係者の購入も目立ちました。経済的リターンだけでなく、ご自分のお金が社会の役に立っているということを意識した個人投資家様が多かったわけです。投資と社会貢献を両立させる考え方が個人投資家様に受け入れられたのは、高い預・貯金比率と国民性が融合した、日本ならではの事例なのかもしれません。

 

――ワクチン債以外にもマイクロファイナンス債、子育て支援債、教育ボンド、そしてグリーンボンドなどを手掛けていますね。

 

徳田:海外の発行体を中心に幅広い分野での社会貢献型債券を手掛けてきましたが、国内発行体の事例も手掛けています。例えば、2011年11月から発行が開始された開発途上国向け円借款が資金使途となる国際協力機構のJICA債での事務主幹事や、2014年10月に発行された日本政策投資銀行による国内発行体初のユーロ市場におけるグリーンボンドを発行する際の主幹事も務めさせていただきました。

 

代田:内外の投資家と内外の発行体とをつなぐ仲介業者としての役割を、今後もSRIの分野で発展させていきたいと考えています。グリーンボンドはこれまでは公的なご発行体のものが多いですが、これを純粋な民間のご発行体に広げていくことが、われわれの課題だと思っています。

 

――機関投資家向けの市場も拡大しているのでしょうか。

 

徳田:海外では年金基金等の機関投資家からの需要を背景にグリーンボンドを中心に社会貢献型債券の市場が拡大しています。ここ1,2年の動きでは、グリーンボンド原則(Green Bond Principles)というグリーンボンドを発行する際のガイドラインが策定されたり、ドイツ復興金融公庫(KfW)等の調達規模の大きな発行体がグリーンボンドを定期発行するプログラムを設定するなどの動きが出ています。機関投資家向けの市場という観点では、海外の方が発展していると言わざるをえないと思いますが、国内でも生命保険会社様が中心になってこうしたグリーンボンドを始めとする社会貢献型債券を積極的に投資する動きが増えてきています。

 

代田:株式投資におけるESG投資が活発化していますが、社会貢献型債券等への投資はESG投資に含まれると考えられますので、債券についても同様の世の中の流れだと投資家様に説明していくべきでしょう。これからは民間の設備投資も環境・社会配慮のものが増えてきて、資金調達にグリーンボンドを活用する動きが広がるよう、証券会社の立場から取り組んでいきたいと考えています。

http://www.daiwa.jp/products/pdf/bond/130226_2.pdf