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ノルウェーのエネルギー大手スタトイル(Statoil) 「最もCO2の少ない石油会社」を目指す。洋上風力発電やCCS開発に力。炭素価格化のメカニズムも要求(各紙)

2016-03-08 13:14:09

Statoilキャプチャ

 

 各紙の報道によると、北欧の石油最大手スタトイル(Statoil:ノルウェー)が、石油開発の経験を生かして、風力発電と二酸化炭素(CO2)の回収・貯留(CCS)に力を入れ、「もっともCO2排出量の少ない石油会社」を目指しているという。

 

 日本経済新聞が同社のニューエナジー部門シニアバイスプレジデントのステーフェン・ブル氏へのインタビュー記事で、同社の戦略を紹介している。

スタトイルの新エネルギー部門のステーフェン・ブル氏

スタトイルの新エネルギー部門のステーフェン・ブル氏

 

それによると、同社は昨年5月に新エネルギー専門のニューエナジー部門を立ち上げた。部門堰に社のブル氏は、新部門を設立に際して、社内議論を重ねた結果、1バレル100㌦の原油価格は持続可能でないとの結論に至ったことを明らかにした。

 

 加えて、石油のような二酸化炭素(CO2)を多く排出する産業に対して、エネルギー価格だけでなく、排出する炭素分にも値付けを求める炭素価格の圧力が強まってくる、との認識から、「スタトイルは、最も炭素の排出量を抑えた石油・ガス会社になろう、との決断をした」と述べた。

 

 その後、原油価格は30㌦台に下落しているが、同社の方針は変わっていない。力を入れているのは、洋上風力発電とCCSへの投資だ。いずれも同社が北海などの厳しい自然環境の中で石油掘削事業を展開してきた際の技術やノウハウが基盤となる事業である。

 

 スタトイルは昨年12月のCOP21の際も、エネルギー分野に価格付けを求める声明を発表している。ブル氏はCOP21のパリ合意について、「米国や中国、インドも加わる画期的なもの。今後、低炭素の動きは世界中で一段と進むだろう。我々は他の石油9社と共同で、国際的な炭素価格を導入するよう求めていく」と語った。

 

Statoilが1996年から北海で進めるCCS事業
Statoilが1996年から北海で進めるCCS事業

 

 同社が開発を進めている有力市場の一つである洋上風力市場については、大型化が進んでいる。一基当たりの出力は以前の2300kW台から、現在は、6000、8000kW台が主流になりつつある。このため設備資金が増大し、資本力の十分ある企業でないと参入が難しくなっているという。

 

 同社の場合、資本力という点で問題がない。ブル氏は「初期費用はかかるが、政府などが買い取り価格を長期に保証するのでキャッシュフローが見通しやすい。年金基金も流入し、市場の安定的な拡大を支えている。当面は発電事業者間の再編は起きないだろう」と、市場環境は安定的にが拡大するとの見方をしている。

 

 すでに英スコットランドのPeterhead沖20-30kmで、進められている浮体式の風力発電プロジェクトHywind Scoltland Polot Park事業への投資も決めている。同プロジェクトの場合、これまでノルウェーで実施してきた浮体式風力発電の実証事業よりも、6~7割ほどコストを減らすことができるという。欧州で主流となっている海底固定式の洋上風力よりも広範囲な地域で事業化できることから、各地での展開を目指している。

 

 また同社は日本の日立造船と連携して、日本市場でも浮体式洋上風力事業を検討している。ブル氏は「各市場に戦略的なパートナーがいる。中でも日本は極めて有望な市場だ。現在は日本の7社と接点がある。三井物産からは鉄鋼製品の供給を受けてきた。米国はニュージャージー州やカリフォルニア州が有望で、やはり現地企業と話しを進めている」とグローバルな展開を視野に置いていることを示した。

 

 一方のCCSについては、技術的可能性よりも、事業化に際してのコスト高が大きなネックとなっている。この点でブル氏は「炭素価格を導入する市場の広がりや価格水準に左右される。当社はCCSに20年近く取り組んでおり、技術的な問題は解決してきた」と指摘した。

http://www.statoil.com/en/Pages/default.aspx