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焦点の英原発ヒンクリー・ポイントC。英中首脳合意による中国国有原発企業の出資約束から5ヶ月を経た今もまだ契約結べず。新たな火種?(RIEF)

2016-03-10 22:13:48

Cameronキャプチャ

 

 フランスの電力会社EDFの財務担当最高責任者(CFO)が辞任を表明し、英仏協調の亀裂が表面化した英原発計画ヒンクリー・ポイントCに新たな疑念が浮上した。昨年10月、キャメロン英首相が習近平中国国家主席とのトップ交渉で合意を取り付けたはずの中国原発企業の同計画への出資が、5ヶ月を経た今も、契約に至っていないことがわかったためだ。

 

 英国が20数年ぶりに新設するヒンクリー・ポイントC原発は、建設コスト上昇で建設が先延ばしされている。事業規模は180億ポンド(約260億㌦=約3兆円)と膨らんでおり、資金面を解決するため、英中首脳交渉で中国の原子力企業の国有企業である中国広核集団(CGNPC)から3分の1の出資約束を取り付けたとされてきた。

 

 キャメロン首相と習主席の共同発表が行なわれた後、EDFの関係者は「これで数週間以内に工事着工にこぎつけることが出来る」と喜びを表していた。

 

 ところが先週、事業主体の一つであるフランスのEDFのCFOのトマ・ピケマル氏が辞任を表明、その背景にヒンクリーポイントへの参加を継続することがEDFの将来の経営に大きな影響を及ぼすとの論争があったことが明らかになった。これを受ける形で、中国のCGNPCとの契約未了の事実が発覚した。http://rief-jp.org/ct4/59218

 

 

 契約は、事業主体のEDFとCGNPCが結ぶことになっている。これまでのところ、EDFも英国も、契約が複雑で長期にわたるうえ、また英中首脳の合意後、欧州側のクリスマス休暇、続いて中国側の旧正月などが続いて、デューデリジェンス作業が遅れている、と事務的な遅れでしかない、と強調している。

 

 しかし、仮にEDFでの混乱が長引くと、CGNPCとの出資交渉もさらに遅れる可能性もある。またEDFの労働組合は、ヒンクリー計画への参画に反対を表明している。原発電力を消費する側の英国内でも、同計画への政府補助金が今回の騒動でさらに膨らむことへの懸念が高まっている。「原発のコストは高い」ことが、問題混迷の根源にあるといえる。

 

 中国のCGNPCはこれまでフランスのアレバが開発したヒンクリー・ポイントCに導入するのと同じEPR(欧州加圧水型)原発を、中国国内で建設を進めているほか、米ウェスティングハウスのAP1000型原発の導入も行なっている。いずれも現在、日本に設置されている原発よりも安全性の優れた「第三世代+」型とされる。しかし安全面を強化したためコストアップとなっており、経済性に弊害が生じているわけだ。

 

 逆にいうと、安全性に十分な配慮を払っていない現在の日本の原発のレベルでないと、原発という発電システムは採算が合わない、ということにも聞こえる。