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大林組の慶応大学キャンパスでのアスベスト(石綿)飛散工事問題、携わった作業員が大林組と慶応大学に損害賠償を申し出。地域住民ヘの飛散の可能性にはどう対処するか(各紙)

2016-03-24 18:09:59

oobayashiキャプチャ

 

 各紙の報道によると、横浜市港北区の慶応大学矢上キャンパスの研究棟改修工事で、工事を請け負った大手ゼネコンの大林組が、建物に使われていたアスベスト(石綿)の飛散防止措置を講じないまま、作業員に工事をさせた問題で、工事に携わった男性作業員が、大林組と慶応大学に対して、謝罪と損害賠償を求める申し出を行なった、

 工事は昨年11月に実施されたが、工事元請の大林組は、工事対象となった研究棟2階の実験室の天井の建材に、石綿が含まれているにもかかわらず、法律で定められた事前調査を怠り、十分な飛散防止措置を講じないまま、工事に着手した。工事自体も横浜市に無届けだった。

http://rief-jp.org/ct12/59446

 作業に当たった作業員は石綿の存在を知らないまま、工事を担当、石綿を吸引した可能性がある。また飛散した石綿は、実験室内だけでなく、屋外の周辺にも拡散した可能性があり、周辺の住民への健康被害の可能性も指摘されている。しかも、石綿による健康被害は、20~30年も潜伏した後に発症することが知られており、長期間にわたる健康管理等が必要になる。

 

  被害を受けた作業員はこの日、横浜市内で会見し、「ずさんな環境で作業をさせられたのは明らか。今後、大林組はちゃんとした対応をとってもらいたい」と訴えた。大林組への申し入れは、神奈川県建設労働組合連合会の担当者も同席、対応した大林組の責任者は、4月上旬に回答すると答えたという。

 

 これまでの報道では大林組は、「当社の完全な落ち度。作業員が吸引したり、周囲に飛散したりした可能性は否定できない」とコメントしてきた。慶応大は、学生や教職員が石綿を吸引した可能性もあることから、学内での相談を受け付けている。

 

 一方、大林組はこの件については、3月24日現在、ホームページで一言も触れていない。同社は企業の社会的責任(CSR)で、基本理念として「『地球に優しい』リーディングカンパニー」を掲げ、「良き企業市民として社会の課題解決に取り組む」「事業に関わるすべての人々を大切にする」などと宣言している。

 

 また「企業行動規範」では、「社会的使命の達成」として、「環境に配慮した社会づくり」「人を大切にする企業の実現」、「企業倫理の徹底」では、「法令の遵守及び良識ある行動の実践」等を列挙している。しかし今回の事件は、法令に違反し、作業員や学生、周辺住民の健康不安を引き起こし、環境配慮をないがしろにした、と指弾されても仕方がない状況といえよう。

 

 アスベスト除去工事については、「大林組の石綿除去技術は、従来の工法に独自の最新技術とノウハウをプラス。早く、安く、安全、確実な作業」とうたっている。

 

 言葉だけのCSRなのかどうか。美辞麗句は不用である。本当のCSRを実践するつもりがあるならば、自らの責任を明確にした後に、健康・環境被害の影響把握を早急に行い、善後策を早急に示すべきだろう。

http://www.obayashi.co.jp/company/philosophy

http://www.obayashi.co.jp/service_and_technology/n_004detail01