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世界42カ国の環境・市民団体がインドネシア・バタン石炭火力事業への日本の官民支援を批判。JBICの融資停止を求める要請書、内外で提出(RIEF)

2016-04-01 17:09:52

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 国際環境NGOのFoE Japanなどの環境・市民団体は、日本が官民協力で推進しているインドネシアの中ジャワ州バタン石炭火力発電事業について、現地で住民に対する人権侵害が繰り返されているとして、事業への融資を予定する国際協力銀行(JBIC)に対し、融資停止を求める声明書を提出した。

 

 声明書には、世界42カ国230の環境・市民団体が賛同して署名した。JBICの渡辺博史総裁とともに、安部晋三首相、麻生太郎財務相、さらに事業を推進する伊藤忠、電源開発(Jパワー)、融資団の三菱東京UFJ、三井住友、みずほの各銀行の首脳に対しても申し入れた。

 

 NGOらによると、同事業に対する融資調達期限が今月6日に迫る中、現地では事業者による反対派住民の土地収用の強制執行が続いているとしている。農地を所有する地権者、農民らによる事業への反対が続く中、事業者側が反対住民の農地をフェンスで囲い込み、農民らが農作業に行けない状況となっている。

 

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 このため、農民らは生計手段である農地にアクセスできず、生活困難に陥るリスクに直面している。また、同事業に対しては、これまでも地元の軍・警察による反対派住民への脅迫、暴力、不当逮捕などが相次いで起きるなどの人権侵害が日常化している。昨年12月にはインドネシア国家人権委員会から、日本政府に対して、慎重な融資姿勢を求める書簡が送られている。

 

 住民らの反対が長期化することで、工事の着工は4年以上遅れている。事業の推進は、日本の伊藤忠商事とJ-Power、地元のアダロ・パワーの3社が中心。総事業費約45億㌦で、2000MWの石炭火力発電所を建設する計画だ。発電した電力はインドネシア国有電力会社PLNに、25年間にわたって売却する契約。

 

 JBICはこのうち、約21億㌦分の融資を検討中とされる。JBICには融資事業に際して環境・社会配慮を考慮することを定めたJBICガイドラインがある。NGOらは、バタン事業は、同ガイドラインに照らすと、明確な違反がみられるとしている。このため、JBICおよび日本政府に対して、同事業への融資を拒否するよう求めている。

 

 また米欧の市民団体からは、昨年12月のパリ合意で世界全体で温室効果ガス削減をすることで合意したのに、日本政府が石炭火力発電所建設を、インドネシアだけでなく途上国で推進していることに対する批判の声も高まっている。

 

 この日、日本のNGOらがJBICに手渡した要請書と同じものが、安倍首相が訪問中のアメリカ・ワシントンDCの日本大使館にも、FoE USなどの米市民団体から提出された。またインドネシア首都のジャカルタにある日本大使館でも、地元の学生団体から提出された。


>以下、要請書本文の和訳です。(原文は英語になります。)
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2016年3月31日

 

内閣総理大臣 安倍 晋三 様
財務大臣 麻生 太郎 様
国際協力銀行 代表取締役総裁 渡辺 博史 様

件名:JBICはインドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電所への融資を拒否すべき

拝啓

 安倍首相の訪米にあたり、世界中から署名を寄せた以下の団体は、日本が特にインドネシアにおける石炭火力発電所の開発事業に果たしてきた役割に対し、深い懸念を表します。日本は、化石燃料から、風力や太陽光といったクリーンかつ持続可能な再生可能エネルギー源に融資を転換させようとする動きを減速させ続けてきました。G7のリーダーとして、日本はもはや遅れをとるのではなく、気候変動による最悪の影響を回避するために不可欠な転換という変革を起こすべく、汚染エネルギーからの転換を奨励するリーダーになることが極めて重要です。

 日本は、科学(的分析)や致命的な気候変動の影響が化石燃料を地中に留めておく緊急的な必要性を示しているにもかかわらず、石炭への継続的な依存を奨励してきた経歴を有しています。2007年から2014年にかけ、日本は海外の石炭関連事業に200億ドル以上もの融資を供与しました。日本はしばしば、石炭関連事業への輸出信用に対する規制の設置に反対してきました。アメリカ、フランス、その他の国々が海外の石炭関連事業への融資を制限した一方で、日本は海外の石炭火力の世界一の支援者でありつづけ、地球と人間に損害をもたらしています。劇的に(炭素)排出を減らす役割を各国が担わなくてはならないというパリ協定に世界が合意したにもかかわらず、2016年において新規の石炭火力発電所に着手することは、この先、何十年も炭素排出という損害を出し続ける危険を冒すということです。

 その一例が、インドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電所です。事業者が適切な方法で同事業に対する「社会的合意」を確保できていないにもかかわらず、また、地権者や農民の合意なしに、彼らが生計手段として依存している土地への出入りを封鎖してしまったにもかかわらず、国際協力銀行(JBIC)は、これまでのところ、同事業への融資拒否をしていません。石炭火力発電所は、気候に甚大な損害をもたらしますが、非常に大きな不の健康影響を地元コミュニティーに及ぼし、平均寿命を縮めてしまいます。同事業に伴う負の環境・社会・気候影響、そして、人権侵害に鑑み、私たちは2016年4月6日の融資調達期限の前に、JBICが同事業への融資を拒否するよう強く求めます。

 事業者とインドネシア政府は、JBIC(環境社会配慮確認のための)ガイドラインに則った適切な環境社会配慮を怠っています。昨年末には、インドネシアの政府機関ではあるものの独立した政府機関であるインドネシア国家人権委員会も、土地収用プロセスをめぐる人権侵害について見直すよう、日本政府に警告しました。日本政府、および、JBICは、農民の生計手段を維持するとともに、現場での無用な衝突を回避するためにも、早急に未売却の農地への自由なアクセスを確保するよう、事業者に求めるべきです。

 インドネシアの地元コミュニティーは、暴力、脅迫、人権侵害に晒されてきました。こうした傾向は世界中で起きており、悲惨な結果を招くこともあります。2016年3月、ホンジュラスのベルタ・カセレス氏とネルソン・ガルシア氏、また、南アフリカのシクホシフィ・ラデベ氏という環境擁護者らが殺害されていることを私たちは目の当たりにしています。国際社会は安倍首相の訪米にあたり、地元コミュニティーに対する脅迫や殺害は受容できないものであることを強く表明します。日本政府、および、JBICがバタン(石炭火力発電)事業に対する融資に邁進すれば、こうした行為を誘発する危険性があります。

 JBICガイドラインは、事業者が適切な環境社会配慮を確保できない事業への融資を実施しないと規定しています。バタン(石炭火力発電)事業では、ガイドラインの明確な違反が見られることから、JBICは2016年4月6日の同事業への融資調達期限を前に、同事業への融資を拒否すべきです。

 日本政府は、気候変動による最悪の影響を回避するため、バタン石炭火力発電事業だけではなく、すべての石炭火力発電事業への融資を拒否するべきです。G7のリーダーとして、日本は石炭火力発電事業への融資を止め、地元の大気や水を汚染することなく、あるいは、気候変動に寄与することのない電気へのアクセスを増進するような、クリーンかつ持続可能な再生可能エネルギー事業への転換を図るべきです。私たちの懸念にご配慮いただき、日本政府が国内、および、海外の石炭火力発電事業への融資を中止する選択をしていただけるよう期待します。

敬具

(以下、賛同団体署名)

Cc: 伊藤忠商事株式会社 代表取締役社長 岡藤 正広 様
電源開発株式会社(J-POWER) 取締役会長 前田 泰生 様
電源開発株式会社(J-POWER) 取締役社長 北村 雅良 様
株式会社三井住友銀行 取締役会長 北山 禎介様
株式会社みずほ銀行 取締役頭取 林 信秀様
株式会社三菱東京UFJ銀行 頭取 平野 信行 様

(以下、42ヵ国230団体署名)

(以上)


バタン石炭火力発電事業の詳細については、こちら

 

http://www.foejapan.org/aid/jbic02/batang/160401.html