再エネ普及で、地域のエネルギー自給率向上相次ぐ。電力自給率100%超の市町村は100か所に。都道府県別では大分県が独走。千葉大と環境エネルギー政策研究所の共同調査(RIEF)
2016-04-16 22:11:38
再生可能エネルギー発電の普及で、エネルギー自給率を高める自治体が増えている。電力自給率100%達成の市町村は全国で100を超え、都道府県別では大分県が38%の自給率で独走している。
調査は、千葉大学倉阪研究室と、認定NPO法人環境エネルギー政策研究所が毎年、共同で日本国内の市区町村別の再生可能エネルギーの供給実態などを把握するために実施している「永続地帯」研究の2015年度報告版。
それによると、2015 年3月末時点で稼働している再生可能エネルギー設備は、2012年7月の固定価格買取制度(FIT)の導入の効果により、太陽光発電の発電量が2012年3月以降の3年間で5.5倍になるなど、再エネ導入が進んでいる。
この結果、域内の民生・農林水産用エネルギー需要(地域的エネルギー需要)を上回る量の再生可能エネルギーを生み出している市区町村(「100%エネルギー永続地帯」)は、2012年3月段階の50市町村から、2015年3月段階では61市町村に増えた。
エネルギー需要のうち、電力に絞ると、自給率100%を達成した市町村は100か所に達した。もっとも自給率が高かったのは大分県玖珠郡九重町で、豊富な地熱発電等を利用し、エネルギー全体で1085.92%、電力では実に2323.13%の高率を記録した。
2位と3位は長野県下伊那郡の大鹿村と平谷村、4位、5位は地震被害を受けた熊本県下の球磨郡水上村と同じく五木村の順。長野と熊本の各村は、豊富な水資源を利用した水力発電がエネルギー源となっている。
地域的エネルギー需要の1割以上を再生可能エネルギーで計算上供給している都道府県は、2012年3月段階で8県だったが、2014年3月段階で14県に、2015年3月段階では21県に増加した。
ただし、これらの増加の多くは太陽光発電の供給量の増加によるもので、2014年度は、対前年度比で太陽熱利用が6.7%減少し、再生可能エネルギー熱供給量も3.1%の減少に転じるなど、課題も現れているという。
都道府県ランキングでは、市町村別でトップの九重町を抱える大分県が38%と前年に続いてトップの座を維持した。福岡と長崎を除く他の九州4県もランク入りしている。
その他は、東北と関東・甲信越が4県ずつ、中部が3県を占めている。太陽光や水力、地熱、森林資源などの自然資源が豊かな地域での再エネ導入が進んでいることがわかる。
100%エネルギー自給率の市町村のうち、30の市町村が、食料自給率でも100%を超えている。これらの市町村は、地域内で必要なエネルギーと食糧を地域で十分に生み出せるため、調査した千葉大と環境エネルギー政策研究所は「これらの自治体こそ、本物の永続地帯」と評価している。