ドイツ 原発の安全性チェックで 作業員による手抜き・改竄工作が、別々の原発2機で発覚。ヒューマンエラーへの対応、重要に(RIEF)
2016-04-19 00:32:33
脱原発を決めているドイツで、既存原発の安全性確認作業において、意図的な手抜きと隠蔽工作が、2機の原発で同時に発覚し、問題化している。
問題となっているのは、ドイツの電力会社EnBWがBaden-Württemberg 州のPhilippsburgに所有する原発と、 RWEがHesse州のBiblisに所有する原発。
ドイツの電力に占める原発の比率は、5年前は22.2%で、現在は14.1%と下がっている。しかし、依然、14%の発電を担っている。
今回明るみにでたのは、いずれも原発の放射性物質測定機器の安全性確認作業を定期的に担当する従業員の手抜き作業だ。しかも、作業を怠ったうえで、作業をしたように記録を改竄していた。
両電力会社は今回の問題で、放射性物質の漏洩等は起きていないとしている。また問題の従業員はそれぞれ解雇されたという。
その一つ、EnBWのPhilippsburgの原発は、州の定期検査のため環境省によって停止され、5月に再開される予定となっていた。もう一つのRWEのBiblisの原発は、2011年に停止になったが、依然、放射性物質の濃度が高いため、点検作業が続けられている。
EnBWによると、定期点検の手抜きと、記録の改ざんは昨年12月に行われていた。同一人の従業員が同じ設備に対して7回の定期点検を実施したように偽装していた。同社は法的措置も検討中という。
同原発は点検作業で停止中だが、1979年稼働でドイツでも稼働中では最古の原発の一つ。点検作業後は再稼働して2019年まで発電する予定。そのため、EnBWは、再稼働後の機器点検は不正が起きないように、2人体制で対応するという。
RWEのBiblis原発の場合は、携帯機器による放射性物質の測定機器の読み取り作業が3ヶ月以上にわたって行われていなかった。しかも、2015年5月に州の環境省は事実関係を知らされたのに、その後、1年近くも住民に公表していなかった。
この点で、同州の野党は、担当従業員の問題だけでなく、情報開示を遅らせた州政府環境省の怠慢を批判している。これに対して、RWEの担当者は「適切な点検が為されなかったことで、問題が起きたわけではない。点検作業は安全性とは別のシステム点検だった」と反論している。
ドイツの環境団体Deutshce UMwelthilfe(DUH)のDirector のSascha Müller-Kraenner氏は、「点検作業が人為的に忘れられたり、手抜きになることは不思議ではない。誰でも忘れたり、気づかなかったりすることがあるものだ。原発の場合、こうしたヒューマンエラー要因を、常に織り込んで安全策をとる必要がある」と指摘する。
確かに、どんな人間でもミスをするし、ミスをすると、隠そうとする場合もある。問題は、こうしたヒューマンエラー要因が起きても、原発の安全性が損なわれないような実効性のある対策をとれているかという点にある。
原発の場合、そうした人為的エラーが放射性物質の漏洩や、安全維持に直結したものになると、被害は甚大になるリスクを抱えている。ルールに厳格なことで知られるドイツ人でも、人為的ミスが常に発生する可能性があるという今回の教訓を、日本の原発対策に実効ある形で盛り込めるかどうか。
DUHのMüller-Kraenner氏は 、EnBW が「測定メーターを再点検したので、同じような点検ミスは二度と生じない」と断言したことを、強く批判する。
「今回のようなことは簡単に起きる。電力会社は安全性の確認作業の手順を固定化し過ぎている。原発は機械設備だが、扱うのは人間だということを忘れてはならない」。日本の原発関係者も肝に銘じてもらいたい。