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住友金属鉱山のフィリピン・コーラルベイ・ニッケル製錬事業。「日本の環境基準を上回る六価クロム汚染が常態化」と、環境NGOのFOEが指摘。同社に対策要請(RIEF)

2016-04-30 14:36:43

sumitomokinzokuキャプチャ

 

 環境NGOのFoE Japanは、住友金属鉱山がフィリピンで開発しているニッケル製錬事業の環境影響を調べるため、2009年からFOEが独自に行った周辺河川等の水質調査の結果を発表した。それによると、日本の環境基準を上回る六価クロムなどの汚染物質を恒常的に検出した。FOEは同社に対して対策を講じるよう要請書を送付した。

 

 住友金属鉱山は、フィリピン南西部にあるパラワン島の南部リオツバ鉱山の隣地に、54%出資する現地子会社のニッケル製錬所、コーラルベイ ニッケル社を操業している。同社には、三井物産、双日などのほか、現地のRio Tuba Nickel Mining Corporationなども出資している。

 

  FOEは同製錬所周辺の河川トグポン川等で、7年間にわたって専門家を交えた水質分析を行った。その結果、日本の「公共用水域の水質汚濁に係る環境基準」のうち、「人の健康の保護に関する環境基準」(0.05 mg/L以下)を超える六価クロム汚染が、毎年、雨季に起きるなど常態化している、ことがわかったという。

 

 調査データによると、乾期は日本の基準を満たす場合もある。だが、雨季は、2009年以降、毎年、基準を超過、特に2011年には10倍の0.3mgを検出している。2015年でも0.1mgと3倍以上と、汚染状況は改善されていない。

 

 住友金属鉱山は、同社のCSR報告書の中で、同製錬所の環境対策を「モデル事例」として紹介、事業開始に際して、フィリピン環境資源省からECC(Environmental Compliance Certificate)を取得、操業開始後も定期的なモニタリングを続けていることを強調している。

 

 

 また、プラント内の雨水、生活用水などの排水は、側溝を通って沈殿池(シルテーション・ポンド)に流れる仕組みとし、常時温度やpHをモニター。工程で発生する残物は、無害化した後にテーリングダムへポンプで送り、埋め立てる仕組みをとっている、などと説明している。

 しかしFOEは、同社が対策を講じたと説明する2012年以降も、日本の基準を超える六価クロムが検出されている点、直近の2015年雨季(9月)の水質調査結果を分析した専門家からは、事業者の「汚染対策は効果を発揮していないものと考えざるを得ない。早急に抜本的な対策を講じるべき」との指摘が出たことを重視している。

 


2015年の調査結果

要請書「フィリピン・ニッケル製錬事業に係る共同水質調査、および、効果的な汚染対策の実施に関する要請について」

別添資料:フィリピン・パラワン島コーラルベイ・ニッケル製錬所、および、リオツバ・ニッケル鉱山開発の現場周辺地域における水質調査の結果報告 一式(2009~2015 年)
(全97ページ。10MB)

 

  表:トグポン川における六価クロム分析結果 7年間の推移 (Unit: mg/L)

 

(*) 高周波誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)による日本での分析結果。
(**) 六価クロム簡易検知管パックテストによる現場での分析結果
(***) 降雨出水時サンプル。六価クロムは上清、全クロムは濾液。

 

 

 
トグポン川(左写真)、六価クロム簡易検知管検査(0.1 mg/L)の結果。(2015年 9月16日)

 


 六価クロムは発がん性、 肝臓障害、皮膚疾患等も指摘される毒性の高い重金属。FOEは住友金属鉱山のほか、同製錬所に出資していう各社や、国際協力銀行等にも要請書を送付した。

 

 FOEは、地元政府機関のモニタリング等の監視体制が十分でないことと、同社が日本の環境基準超過の汚染水排出をそのままにしているのは『ダブル・スタンダード』による公害輸出だ、とも指摘。国内と同等の基準遵守を途上国でも積極的に確保していく姿勢が求められる、と警鐘を鳴らしている。

http://www.foejapan.org/aid/jbic02/rt/press/2016Apr.html

http://www.smm.co.jp/csr/environment/oversea/