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東電、福島第一原発炉心溶融の公表遅れ問題は、「隠蔽」。原子力部門トップが見解公表。「隠蔽の責任問題」焦点に(各紙)

2016-05-31 00:45:14

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 東京電力福島第一原子力発電所事故発生時に炉心溶融(メルトダウン)の公表が事故発生から2カ月遅れた問題で、東電の姉川尚史原子力・立地本部長は30日、会見し、「溶融という言葉を使わないことで(国民に)迷惑をかけているのであれば、隠蔽だと思う」と述べた。

 

 この問題で原子力部門のトップが公式に「隠蔽」を認めたのは初めて。4月11日には、岡村祐一原子力・立地本部長代理が記者会見で、「(炉心溶融の基準を)私自身は認識していた」と語っていた。http://rief-jp.org/ct5/60236

 

 東電は、福島第一原発事故時に、核燃料が溶け落ちる「炉心溶融(メルトダウン)」の基準を定めた社内規定「原子力災害対策マニュアル」が存在し、炉心損傷割合が5%を超えていれば炉心溶融と判断するとなっていたのに、これに従った対応をせず、見過ごして事態を過小評価していた、と今年2月に公表した。http://rief-jp.org/ct13/58832

 

 事故当時、東電は、2011月年3月14日午前5時過ぎには、3号機の原子炉格納容器内の放射線監視装置が回復し、炉心損傷割合が約30%に達していることを把握した。また、1、2号機も5%を超えていることを確認していた。社内規定通りなら、この時点で炉心溶融を判断し、迅速な対応をとれたはずだ。しかし、実際に東電が炉心溶融を認めたのは事故から2ヶ月後で、対応遅れの要因となった。

 

 問題はこうした東電の対応が、意図的な隠蔽か、混乱の中でのミスだったかだ。この日の会見で姉川氏は、2011年3月の事故後に1号機で起きた炉心溶融の割合を示しながら「55%や70%炉心損傷していた状態で注水できていない状況を考えれば、常識的な技術者であれば炉心溶融と分かる」と話した。

 

 4月の岡村氏の発言も含め、原子力技術者の間では、炉心溶融は疑いないという認識を共有していたとみられる。では、2か月も判断が遅れたのは、誰の指示だったのかが今後、問われざるを得ない。この問題を調査している第三者検証委員会は、近く結果を公表する見通し。この日の姉川氏の発言は、委員会の公表を先取りしたとの見方もできる。

 

 結果として、炉心溶融の事実の公表を“隠蔽”したことで、炉心溶融に伴う避難行動が起きず、大混乱を避けることができた、との見方もできる。しかし、それはあくまでも結果論で、東電の「隠蔽工作」の成果ではない。

 

 明らかなことは、未曽有の危機が顕在化した渦中でも、東電の首脳部が事実を国民に公表せず、隠蔽し、虚偽の情報を流した、ということだろう。東電の原子力情報の取扱いの基本に、「事実を伝えない」「都合のいい情報だけ出す」という体質があることを、改めて浮き彫りにしたといえる。

 


 今年2月に、炉心溶融についての社内規定の存在を認めた白井功原子力・立地本部長代理氏は、「炉心の損傷割合が5%になったら炉心溶融と判断するという『原子力災害対策マニュアル』の記載は、今年2月に入って初めて発見した」と説明していた。http://rief-jp.org/ct13/58832

 

  この時は、「(早期に)データの持つ意味を解釈し、炉心溶融を公表すべきだった。事故を矮小化する意図はなく、公表をしないよう外部からの圧力もなかった」と説明していたが、姉川氏の「隠蔽」容認発言は、そうした説明も修正の必要があることを示唆する。