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米インド首脳会議 原発6基建設と、再エネ投資で新たに14億㌦で合意。インドの「クリーンエネルギー」の柱は原発か、再エネか(RIEF)

2016-06-09 18:30:07

Mudeキャプチャ

 

 オバマ米大統領とインドのモディ首相はワシントンで開いた日印首脳会談で、東芝傘下の米ウエスチングハウス(WH)がインドに2030年までに原子力発電所6基を建設することと、インドの再生可能エネルギー投資に14億㌦を投じるイニシアティブを新たに始めることで合意した。

 

 インドは急速な経済成長の一方で、電力不足が各地で深刻化している。またパリ協定の基づく温室効果ガス削減目標を達成する必要にも迫られてくる。こうしたことから、今回の首脳会議では、クリーンエネルギーの導入促進を加速するため、再エネ投資支援とともに、CO2排出がない原発を「クリーンエネルギー」と位置づけ、米国からの導入を決断したとみられる。

 

 米ホワイトハウスで会談をしたモディ首相とオバマ大統領は共同声明で、「WHとインド印原子力発電公社が契約を完了させることを歓迎する」とうたった。両首脳は前回2014年9月の首脳会議において、エネルギー安全保障、クリーンエネルギー、気候変動の3分野での戦略的パートナーシップ強化を宣言しており、今回の原発、クリーンエネルギー協力もそうしたパートナーシップ関係の強化、と位置づけている。

 

 インドに建設されるWHの原発は、最新鋭で安全性を高めたとされるAP1000。今月中に契約交渉を終えて、2030年に稼動の方針という。共同声明では「この合意は、米印商用原発協定の中核をなすもので、両国の雇用拡大にもつながり、クリーンエネルギー目標の共有を促進する」と強調した。

 

 インドの再エネ投資拡大への協力では、すでに2014年の首脳会議で再エネ普及のためPartnership to Advance Clean Energy (PACE)を締結している。米国はこのPACEを通じて、これまでに25億㌦をインドの再エネ投資開発に投じてきた。今回はインドが2022年までに再エネ発電を175GWを配備する計画への米国の支援として、4.3GW分の新規投資を約束した。また、新たに二つのイニシアティブを立ち上げ、14億㌦をインドの太陽光発電事業に投じることで合意した。

 

 二つのクリーンエネルギー・イニシアティブは①U.S.-India Clean Energy Finance Task Force②New Clean Energy Finance Initiatives。①には再エネ電力等の購入協定(PPA)の標準化などのほか、小規模な再エネ事業をプール化してABS(資産担保証券)型のグリーンボンドを発行するための協力などが盛り込まれている。

 

 もう一つの②については、米国の複数の民間財団と協力してインド政府のクリーンエネルギー投資を支援するという内容だ。米国のOverseas Private Investment Corporation (OPIC)もイニシアティブに加わる。官民一体でモディ政権の再エネ支援を約束し、パリ協定の批准を促す狙いがあるとみられる。

 

 インドの原発政策はモディ政権下で、大きく変わった。同国はかつては核拡散防止条約(NPT)非加盟のまま核実験を強行し、世界の原発市場から閉め出されていただ。だが、2008年に原子力供給国グループ(NSG)が核技術や燃料の対印供給を解禁、米仏両国と原子力協定に調印した。さらに原発事故時の賠償責任をメーカーに負わせるとしていた国内法についても、モディ政権下で改正、外国からの投資を受け入れる環境を整備した。

 

 今回の共同声明でも、オバマ大統領はインドのNSGのメンバーへの参加を歓迎した。WHのAP1000の6基建設の総事業費は200億㌦に達するとみられ、米国にとっての雇用だけでなく、WHの親会社である東芝の経営にもプラス効果が期待される。インドは現在、原発21基が稼働中で、発電能力578万kWと世界で14位だが、2032年までに約40基を追加し、発電能力を10倍超に引き上げる方針を打ち出している。

 

 このため、米国だけでなく、フランス、ロシア、中国などの原発メーカーを抱える国が同国市場への参入を目指している。日本も15年末に同国との原子力協定締結に原則合意しており、東芝以外の日立製作所や三菱重工などがそれぞれ独自の原発輸出を視野に入れている。ただ、原発コストは東電福島事故以来、安全対策コストが上昇、フランス・アレバ社の欧州加圧水型原子炉(EPR)の欧州での配備が行き詰まっているなど、課題も露呈している。インドでの「クリーンエネルギー」の主流が、原発なのか、再エネなのか、その見極めはいまだ、クリアではない。

 

https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2016/06/07/fact-sheet-united-states-and-india-%E2%80%93-moving-forward-together-climate