HOME4.市場・運用 |2015年の世界のCO2排出量伸び率、ほぼ横ばい(プラス0.1%)。米、中などの石炭火力離れが効果。日本も東電福島原発事故前の水準に戻る。BPが年次調査で指摘(RIEF) |

2015年の世界のCO2排出量伸び率、ほぼ横ばい(プラス0.1%)。米、中などの石炭火力離れが効果。日本も東電福島原発事故前の水準に戻る。BPが年次調査で指摘(RIEF)

2016-06-11 00:16:06

CO22キャプチャ

 

 2015年の世界のCO2排出量は、1992年以来でもっとも伸び率が小さい0.1%となり、ほぼ横ばいだった。石油メジャーBPが毎年公表している年次分析による。米ロが減少したほか、日本も東電福島原発事故前に戻った。伸びが目立ったのはインド、サウジアラビアなど。

 

 2015年のCO2排出量の伸び率は、リーマンショック時の減少時を例外とすると、過去23年間でもっとも小さかった。この伸び鈍化に影響したのは、まず米国。オバマ政権が石炭火力発電所規制を打ち出した効果で前年比2.6%減となった。

 

 米国のCO2レベルは2012年の水準にまで戻り、これまでのピークだったリーマンショック前の2017年と比べると、10.5%も減ったことになる。米国は京都議定書に参加しなかったなど、それまでの削減努力が十分でなかったという面もあるが、オバマ政権での温暖化対策が効果を上げていることは間違いない。

 

 また、ロシアも4.2%減と大きく下がった。ロシアの場合は景気減速が影響したとみられる。次いで、チェルノブイリ原発と東電福島原発という二つの原発事故でエネルギー体制が激変したウクライナと日本をみると、両国とも減少が目立った。

 

 日本は福島事故前の2010年より2%多いレベルに戻った。日本の場合、石炭火力発電が増加しているが、その一方で、企業や家庭のエネルギー効率化が進んでいることが大きな要因になっている。ウクライナは旧ソ連から分離独立して以来、もっとも低いCO2排出量だった。

 

 その他ではブラジル、カナダも排出量が減少した。中国も1998年以来初めて、伸び率がわずかだがマイナス(マイナス0.1%)となった。中国景気の減速と、政府が積極的に推進している「石炭火力から再エネ発電へ」の切り替えが効き始めているのかもしれない。

 

 一方で、もっとも大きな伸びを示した国もある。インドとサウジアラビアが代表格で、それぞれ前年比5.3%増、5.45増。インドの大幅増は2年連続。

 

 もう一つの「異変」は欧州連合(EU)が、わずかだが2010年以来の増加(4360㌧)となった点だ。過去10年間で、EUの排出量が増加したのは3度目。ただ、CO2排出量のレベルは1967~68年の水準とほとんど変わっていない。EU加盟国別では、スペインとイタリアの増加が目立った。

 

  BPはCO2排出量がグローバルに、ほぼ横ばいとなった理由として、石炭の使用が世界的に鈍化していることと、エネルギー効率化が広がっている点、さらに再エネ投資が力強さを増してきたこと、の3点を指摘している。

 

 再エネ発電では、中国の導入量が目立った。風力は17.4%の増加、太陽光の場合は実に32.6%増と伸び、ドイツや米国を上回る最大の太陽光発電国となった。米国も再エネ全体では19.7%増で、ドイツは10.9%増と続いた。

 

 BPのチーフエコノミストのSpencer Dale氏は「CO2排出量の横ばい傾向は、再エネなどの構造的な要因が効果をあげている可能性が大きく、持続し成長する可能性がある」と評価している。ただ、世界的な需要減速よる循環的要因もあるとみられるほか、中国がエネルギー多消費産業の改廃を進めている政策効果の持続性があるかも課題、と指摘している。

 

 化石燃料の推移をみると、石炭の消費は1.8%減となった。価格は20%も下落したが、石炭需要にはつながっていないといえる(日本は別のようだが)。石炭消費減少の主要な要因はやはり米国で、火力発電所の燃料を従来の石炭からシェールガスに切り替える動きが続いていることが大きい。

 

 石油の需要は日量換算で190万バレル増加した。需要増はもっぱら石油価格の下落の影響という。Dale氏は、北海ブレント油の価格は$28の安値から現在は$52前後に戻しているが。年後半にはさらに上昇すると見込んでいる。

 

http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html