HOME |世界の石油・ガス開発投資への投資資金急減。2015~2020年にかけ、1兆㌦(105兆円)の削減に。原油価格低迷の影響大きく。米市場の投資減少目立つ。英調査会社のまとめ(RIEF) |

世界の石油・ガス開発投資への投資資金急減。2015~2020年にかけ、1兆㌦(105兆円)の削減に。原油価格低迷の影響大きく。米市場の投資減少目立つ。英調査会社のまとめ(RIEF)

2016-06-16 18:53:29

 

 世界の石油・天然ガス開発へ投じられる資金が急減している。英エネルギー調査会社のWoodMAckenzieのまとめによると、2015~20年の石油・ガスの上流部門での開発投資額は2014年の推計に比べ7400億㌦(約78兆4400億円)削減され、従来型の掘削投資の削減を含めると投資減少額は1兆㌦を超えるという。

 

 石油・ガス開発への投資額が急減しているのは、2年前からの原油価格の下落が大きな影響を及ぼしている。産油・産ガス国全体影響を受けているが、特に米国ではシェール石油、同ガスの開発が影響を受けている。米国では14年の計画時に比べて資本支出額が半減し、総額1250億㌦分が今年と来年の2年間で削減され、さらに2000億㌦が2020年までに削減されると見込まれている。

 

 ロシアも同様に大きな資本投資額の減少が見込まれている。今後2年間に投資額は40%以上の減少となる。ただ、ロシアの場合、投資額減少の要因には、通貨ルーブルがドルに対して下落しているため投資額が減少してみえる点もある。生産量自体は今年3月には旧ソ連崩壊後の最大の産出量である日量1090万バレルを達成している。

 

 欧州の北海油田は、英国、ノルウェーとも、14年以降、率にして36%、金額にして275億㌦の投資削減となっている。北海油田全体の埋蔵量がピークを過ぎていることもあり、英国だけで今後の5年間に少なくとも140の採掘ポイントの閉鎖が予想されている。リグ等の撤去等の費用だけで780億㌦の支出が必要とされる。

 

 regキャプチャ

 

 中東は全体として市場シェアを維持する戦略を取っている。このため、投資額の大幅な下落は表面的には起きていない。盟主のサウジアラビアやイランなどは17年にかけても従来どおりの投資を堅持する路線を変えていない。しかし、原油価格の低迷が続いていることから、各産油国の財政収支は悪化が続いている。

 

 全般的に投資減少が続くが、地域によって、あるいはプロジェクトによって、投資の引き揚げか、継続かの判断は分かれる。北アフリカではイタリアのEniがエジプト沖のZohrで進めているガス開発や、BPの同じエジプトの西ナイルデルタでの開発計画などは継続されている。

 

 ウッドマッケンジーの副社長のAndrew Latham氏は「石油・ガスの開発投資は2014年以来、半分以上減っているが、今年も来年も、投資額全体は年間420億㌦と見込んでいる。費用の削減が想定ほどには下がらないことが投資意欲を減退させている。ただ、いくつかの深海開発は長期契約が基本だが、コスト低下は想定以上のケースも出ている」と指摘している。

http://www.woodmac.com/analysis/global-upstream-investment-slashed-by-US1-trillion