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環境大臣、石炭火力発電所計画になし崩しで「是認」。 このままでは気候変動長期目標達成は困難に(KIKO)

2016-07-05 18:39:21

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 7月1日、福島復興大型石炭ガス化複合発電設備実証計画(広野)(54万kW)に係る環境影響評価準備書、福島復興大型石炭ガス化複合発電設備実証計画(勿来)(54万kW)に係る環境影響評価準備書、そして(仮称)横須賀火力発電所新1・2号機建設計画(計130万kW)に係る計画段階環境配慮書の3つの石炭火力発電所建設計画に対する環境大臣意見が公表された。(KIKO:気候ネットワーク)

 

 昨年、環境大臣意見書では、5件の石炭火力発電所建設計画に「是認できない」としたものの、今年2月上旬にその立場を一変させ、5月には鹿島(準備書)、常陸那珂(準備書)、西条(配慮書)と次々と建設計画を「容認」する意見書を公表してきた。

 

 そして今回も前回同様、発電事業者および小売電気事業者に対して何も担保のない省エネ法および高度化法をあげて電力業界全体の取り組みの実行性を確保するように求めつつ、事実上容認の立場を示した。こうした事業者による努力義務でしかない枠組みのみで、大量に温室効果ガスを排出する発電方法を容認し続けることは、気候変動対策を後退させるだけである。

 

 特に、福島復興大型石炭ガス化複合発電設備実証計画については、2014年8月、配慮書に対する環境大臣意見の中で、「事業の実施により、福島県の経済復興や雇用回復・創出に資することが期待されている。また、東京電力の新・総合特別事業計画(2014年1月15日)において「2020年の東京五輪の開催までに・・・竣工させ、電力供給の一翼を担う『オリンピック電源』としても位置付けることが期待される」として、「できる限り早期に実証を終了させ、信頼性が確保された発電技術として確立することが期待される」などと推進されていた。

 

 欧米諸国が「脱石炭」に向かう中で、石炭火力を「オリンピック電源」などと時代錯誤な位置づけをして推奨していること自体が問題だが、広野の運用開始は公式に2021年とされているため、当該計画の2020年東京オリンピックの開催時期までの商用化は困難とされている。経済的にも見合わないことからIGCC(石炭ガス化複合発電)はすでに諸外国が手をひきはじめている技術であり、CO2排出量は「高効率」であってもLNGの約2倍となる技術を環境大臣は容認すべきではない。

 

 また横須賀については、既設の重油を燃料とする3~8号機が老朽化しており、早いものでは2004年より長期停止中となっており、発電所としてほとんど使われていない。リプレースにせよ、燃料を石炭にして稼働することで、周辺環境の悪化や気候変動の甚大な影響をおよぼす。

 

 このように、次々と新規石炭火力発電所の計画を環境大臣が容認し、新たな発電所が増えれば、2030年に13年度比26%という非常に低い削減目標すら達成できず、2050年80%削減の達成も危ぶまれると大変憂慮する。

http://www.kikonet.org/info/press-release/2016-07-04/fukushima_igcc_yokosuka