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東芝、中国で原発ビジネス拡大-受注目標50件、傘下のウエスチングハウスの技術で周辺設備にも意欲 (日刊工業新聞)

2016-07-12 11:35:21

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 東芝のエネルギー部門を統括するダニー・ロデリック氏は、中国において原子力発電所建設関連で今後50件程度の受注獲得を目指す方針を明らかにした。中国では全体で200基を超える原発の新設計画があるとされる。東芝は傘下の米原子力大手ウエスチングハウス(WH)の技術を展開し、原子炉だけでなく周辺設備を含め中国で原発ビジネスの拡大を目指す。

 

 ロデリック氏は6月に東芝エネルギーシステムソリューション社社長に就いた。WH会長を兼ねる。

 

中国ではWHが新型加圧水型軽水炉(PWR)「AP1000」4基の建設プロジェクトを進める。WHは中国の国有企業である国家核電技術(SNPTC)にAP1000の技術を供与している。

 

中国政府は新設する原子炉について、今後は国産化を進める方針。ロデリック氏は「事業スコープ(領域)は変わってくる」と述べ、原子炉の周辺装置の受注獲得にも意欲を示した。現在、8カ所で監視計装制御システムの受注を目指している。

 

東芝は半導体メモリーとともに原発事業を経営再建の柱に位置付け、2030年度までに世界で45基以上の原子炉受注を目指す。世界的に原発需要が高まる一方で、安全への懸念や石油価格の下落などを背景に計画が遅延する事例なども出ており、東芝が受注目標を達成できるか不透明な要素もある。

 

インタビュー/東芝エネルギーシステムソリューション社長のダニー・ロデリック氏

 

エネルギー部門を経営再建の柱に位置付けた東芝。同部門で成長をけん引するのは原子力発電設備事業だ。インドで6基の受注がほぼ固まるなど明るい兆しが出てきたが、世界の原発市場には不透明感が漂う。また東芝の財務基盤の弱さが受注競争のアキレス腱(けん)になる懸念もある。6月に東芝のエネルギーシステムソリューション社の社長に就いたダニー・ロデリック氏(ウエスチングハウス〈WH〉会長)に同部門の戦略を聞いた。

 

―世界の原発需要は中長期的には伸びる見通しだが、建設工事の遅延などの問題も起きています。市場動向をどう見ていますか。

 

「東京電力福島第一原発事故の影響などを受けて市場が低迷していたが、回復しつつあり、各国で原発新設への興味が戻ってきた。建設の計画遅れは、原油価格の低下など経済変化が主因だ。電力供給の安定性や環境負荷が低い点で原発には優位性があり、徐々に状況は良くなる」

 

―2030年度までに45基以上の受注目標を掲げました。

 

「米国と中国の受注済みの案件に加え、インドで6基、英国で3基受注できる見込み。さらに米国で2基、トルコで4基追加できそうだ。中長期的に期待できるのは中国。このほかメキシコや東欧にも注目している」

 

―原発運営ノウハウが乏しい国では、メーカーに電力会社への出資を求める事例が出ています。資金余力に乏しい東芝は不利になりませんか。

 

「新興国ではメーカーと電力会社が連携するビジネスモデルが、5―10年は続く。新興国での原発運営ビジネスに興味を持つ企業は多いことから、先進国の電力会社など他の投資家と組んで対応し、東芝グループの投資額を低く抑える」

 

―東芝は沸騰水型原子炉(BWR)、WHは加圧水型原子炉(PWR)を展開していますが、受注のメーンはPWRです。今後のBWRの取り扱いは。

 

「(BWRの)福島第一原発に事故が起きた後、市場が変化している。当社は改良型BWRの技術に自信があり、どう市場を作るか考えている。『BWRをやめるのか』と問われれば、答えは『ノー』。メーカーとして双方の知識と経験を有しているのは大きなアドバンテージだ」

 

【記者の目/日本政府の後押し不可欠】

東芝・WH連合は技術力と建設ノウハウの両面でトップクラスに位置する。ただ今後は受注合戦が激化する見込みで、受注には日本政府の後押しが不可欠だ。また原発を建設する国の政権が交代して計画が覆るなど、海外での原発ビジネスにはリスクが付きまとう。東芝は日本政府との連携強化に加え、リスクに耐えられるよう財務基盤の拡充を急ぐ必要がある。(後藤信之)

 

http://www.nikkan.co.jp/articles/view/00392310?isReadConfirmed=true