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電力の送配電利用の「託送料金」。送電事業者や大口企業に有利で、消費者には不利な仕組み、内閣府専門委が報告(RIEF)

2016-07-17 00:01:13

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  内閣府の消費者委員会の電力託送料金調査会は15日、電気料金を構成する送配電網の利用料「託送料金」制度が、送電事業者や大口企業に有利で、消費者に不利になっていると指摘した報告書をまとめた。その結果、託送料金は国際的にも高値に張り付いており、許認可権を持つ経済産業省に対し、制度の見直し等を求めた。

 

 委員会は、今月中に河野太郎消費者担当相に答申する。報告書に強制力はないが、経産省は指摘に対して合理的な回答を求められる。

 

 託送料金は、地域ごとに送配電網を管理・運営する東京電力ホールディングスなどの大手電力10社(送配電会社)が、人件費や設備投資など必要な経費を積み上げて算出し、経産省が審査して認可している。

 

 東京電力管内の場合、託送料金に「電源開発促進税」など、原発を維持・推進するための費用を加えた金額が利用者に開示されており、1kwh当たりでは8.57円。利用者はこれを電気料金の一部として支払っている。

 

 報告書は現在の制度の課題を3つ指摘している。第一が、電力会社が原価低減のコスト削減をしても、託送料金に十分に反映しない点。もう一つは固定費の家庭用、産業用等への配分で、家庭用に不利な偏りがある点、さらに送電事業者の個別の原価の適正性に疑問があるという。

 

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 第一のコスト削減が託送料金に反映しない点については、値上げ改定は経産省の認可制だが、値下げ改定は届け出制で任意のため業者にインセンティブが働かない。

 

 事例として、東京電力の2012~14年の3年間の実例が示されている。原価算定期間で全社で計画値を上回る約7000億円のコスト削減を実現し、また送配電部門の割合の高い修繕費でも計画値を約100億円上回る416億円を削減したが、これらのコスト削減の上積み分は託送料金に反映していない。また燃料費を除くデフレ要因の反映もみられない。

 

 委員会ではこれらの点の改革案として、定期的に原価算定期間を設定し、その期間終了後に原価の洗い替えをする制度の導入や、大規模な設備投資と経常的なコストは切り分けて審査することで、総括原価方式の修正を求めている。

 

 また第二の固定費の配分問題は、設備などの固定費が託送料金の大部分(東電は約80%)を占めるウエイトの大きさがある。固定費は低圧部門(家庭)、高圧部門(企業)、特別高圧部門(同)の3つに分かれ、それぞれの設備の利用状況に応じてコスト配分がなされる仕組みとなっている。

 

 委員会はこの仕組みが、原因者負担による配分でも、受益者負担による配分でも、いずれも低圧部門の負担が大きくなるが、「それを正当化する十分な理由を見つけるのが難しい」と指摘、家庭部門に恣意的に負担がしわ寄せされている懸念を示している。

 

 この点への改革案として、報告書は、固定費配分は原因者原則に基づく配分にすべきとしている。同原則ならば設備の過大な増加を抑制し、省エネと料金抑制に役立つとしている。また現行の仕組みは再生可能エネルギーのような分散型小規模電源を想定しておらず、早急に対応するよう求めている。

 

 3つ目の送配電事業者の個別の原価適正性については、送配電事業者は一般企業であるため、一般競争入札等のルールがなく、調達に際して自ら主体的に効率化を図るインセンティブがない。競争発注の目標率も、東電が60%(2015年度実績は65%)だが、他の電力は30~35%を目標値としている。

 

 また一般送配電各社の調達資材は、汎用標準のものは少なく、自社独自の仕様のものが多い。しかし、その理由は明確ではない。これらの結果、調達コストの高止まり、調達先の固定化などが起きている。

 

 対策としては、各社の効率化努力を外部から監視する仕組みが必要とし、経産省は各社の効率化への取り組みを毎年、検証・評価するよう求めている。その際、競争発注比率の引き上げ、仕様・設計の汎用化と標準化、国際標準との整合性、関連情報の英語化などを提言している。

 

 日本(東電)の家庭向け電気料金に占める託送料金の割合は30%超を占め、20%前後のデンマークやイタリアなどの欧州各国より高い。このため委員会は、消費者に対して託送料金についての情報をわかりやすく示すよう求めている。