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東アジアを航行する船舶排出ガスの急増、周辺国で年間数万人の早死の原因に。日本でも年間約3600人の死因に影響。米中チームの共同研究(RIEF)

2016-07-19 20:12:25

EastAsia5キャプチャ

 

 日本を含む東アジア地域を航行する船舶からの排出ガスの増加によって、同地域全体で年間数万人が死亡しているとする研究論文を、中国と米国の科学者チームが発表した。地球温暖化の加速要因にもなっているとしている。

 

 論文は、中国清華大学の研究員Huan Liu氏ら清華大チームと、米国Duke大学のDrew Shindell教授らのグループによる共同論文。英科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)に掲載された。

 

 論文によると、東アジア地域は、中国経済などの急成長によって製造業と輸出の中心地となっており、その結果、世界中でもっとも船舶からのCO2排出量と、伝統的な大気汚染物質の排出量の伸び率が高い地域という。しかし、これまで同地域での船舶からの大気汚染の実態については十分な分析が進められてこなかった。

 

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 研究チームは、2013年に同地域で確認された船舶1万8000隻以上の記録を基に、全体の排出ガス量を計算し、それによる影響を推定した。分析の結果、東アジアでの船舶の往来は、2005年に比べて2倍以上に増加しており、2013年には世界全体で船舶が排出した二酸化炭素(CO2)のうち16%を同地域からの排出量が占めたという。同地域の排出量のウエイトは、2002~2005年にはわずか4~7%だったので、2~4倍も増加したことになる。

 

 東アジア地域は、世界のコンテナ港上位10港のうち、8港を有する。 研究チームの推計によると、船舶の排ガスから出る汚染物質などが原因で、地域全体で年間1万4500人~3万7500人が早死しているという。地域別にみると、中国本土が最も多い約1万8000人、その次が日本で約3600人、台湾・香港・マカオを合わせて約1100人、韓国が約800人、ベトナムが約600人となっている。

 

EastAsia2キャプチャ

 論文は、大気汚染を原因とした100万人当たりの早死比率の割合は、現時点ではまだ小さい、としている。しかし伸び率の勢いから、早期の対応が必要と警告している。また船舶からのエアロゾルやオゾンを原因とする放射性物質の排出量はグローバルな平均に比べて影響は少ないが、現在の排出量が継続するようだと、8年後には、グローバルな排出量にも影響を及ぼすようになるだろうとも警告している。

 

 防止対策については、多くの船舶が各国、各港に登録されていることから、一国だけでの対策では限界がある。このため、論文は、地域全体での共同行動と各国間の協調体制の確立を求めている。この分野でも、日中韓の協調が求められているわけだ。

http://www.nature.com/nclimate/journal/vaop/ncurrent/full/nclimate3083.html