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フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領 「パリ協定に批准しない」と宣言。経済成長を最優先(RIEF)

2016-07-21 00:40:50

phillipinキャプチャ

 

  独特の言動で知られるフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、地球温暖化対策のパリ協定について「批准しない」と宣言した。

 

 フィリピンはアキノ前大統領の下で、パリ協定に署名している。しかし、ドゥテルテ大統領はこれまでも、温暖化ガス排出量削減を富裕国にではなく、すべての国に課そうとするのは、国連の”偽善”だと批判したことがある。

 

 大統領は今週初めに演説、「わが国はパリ協定に参画する栄誉を求めないだろう」と述べ、協定への批准を行わない姿勢を改めて示した。

 

 演説の中で大統領は、最近、ある国の駐比大使と会談した際、フィリピンの温室効果ガス削減対策について問われ、攻撃されたように感じたと言う。「この大使に頭にきた。蹴飛ばしてやりたかった」。フィリピンの排出量を削減するのは「ナンセンスだ」と断言した。どこの国の大使だったかは明らかにしなかった。

 

 「先進国は経済発展のピークに到達し、これまでに多くの廃棄物を出し、汚染物質を排出してきた。よくやった、という感じだ。われわれはこれからだ。われわれはまだ産業化の時代に到達していない。わが道を行く、ということだ」–大統領は意気盛んに語った。

 

 パリ協定はフィリピンを含む195カ国の代表が署名して成立した。世界の気温上昇を産業革命以前から2℃上昇未満にとどめることを目標とし、1.5℃に抑える努力もするという内容で、先進国だけでなく途上国を含むすべての国が、そのために温室効果ガス削減の国内対策を実施することを約束している。

 

 協定は世界の温室効果ガス排出量の55%以上を占める55カ国以上の批准によって発効することになっている。フィリピンの排出量は世界の排出量の1%に満たないレベルなので、同国が批准しなくても、全体にはさほど影響はないとみられる。

 

 しかし、先進国内でも米国でドナルド・トランプ氏が大統領になったら、協定からの離脱は必至であるほか、欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国が温暖化対策を見直す動きをチラつかせるなど、先進国内の足並みも微妙な雰囲気が出つつある。フィリピンの「批准拒否」が不協和音の引き金にならないとも限らない。

 

 もっとも、そのフィリピンは温暖化の影響で年々、激化する大型台風の襲来を受け、膨大な被害と経済的損害を毎年のように計上している。パリ協定による各国の協調対策が進まないと、同国の被る温暖化被害は増えることはあっても減ることはない。

 

 ドゥテルテ大統領はこれまでも暴言で知られている。麻薬王の一人と疑われる実業家に向かって、「お前を殺してやる」と面罵したり、ローマ法王に侮蔑的言葉を投げかけたり、と逸話にはきりがない。

 

 ただ、環境問題では、同国の主要輸出品であるニッケル鉱山からの環境汚染が社会問題化していることを踏まえ、大統領就任早々、ロペス環境天然資源相を通じて、ルソン島サンバレス州の2鉱山の生産停止を命令するなどの行動もとっている。

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