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ロシアの原子力企業Rosatom 米国核燃料市場参入で、GE日立ニュークリア・エナジー社と協力関係構築。対ロ経済制裁のすき間で核ビジネス(RIEF)

2016-07-24 00:34:39

Rosatomキャプチャ

 

 ロシアの国営原子力企業Rosatomは米国の原発用核燃料市場に進出する。米GEと日立製作所の合弁会社であるGE-Hitachi(GEH)と、Rosatom子会社のTVELが、米国の原発にロシア製の核燃料売却等の協力関係を結ぶ。

 

 GEHはRosatomとの「燃料同盟」を、東芝も加わって設立した子会社のGlobal Nuclear Fuel (GNF) とTVELとの間で結ぶ。米国への輸入が検討されているのはTVELの開発した加圧水型原子炉(PWR)用のTVS-K と呼ぶ核燃料。Rosatomによると、すでに米国のある原発事業者との間で燃料輸出契約を結んだとしている。

 

 今回の「燃料同盟」によって、GNFは米国市場でのプロジェクトマネジメント、免許、品質管理、エンジニアリングサービスなどをロシア側に提供する。TVELはTVS-Kのデザイン技術、核燃料棒の初期製造等を提供する。燃料製造工場はノース・カロライナ州WilmingtonにあるGNFの工場で製造することになる。

 

 rossatomキャプチャ

 

 RosatomとGEHは先週、モスクワでそれぞれの経営トップが集まった会談を持ち、両者の原子力協力関係の発展と、TVS-K核燃料の米国市場での免許取得等の実務的な意見交換も行った模様だ。核燃料の米市場への輸出には米原子力規制委員会(NRC)の認可が必要になる。

 

 モスクワ会合には、RosatomのCEOのSergey Kirienko氏、同社の第一副代表のKirill Komarov氏、子会社TVEL社長のYury Olenin氏、GEHの CEO・社長のJay Wileman氏、GNF(A)のCOOのAmir Vexler氏らが参加した。

 

 ロシア側は、TVELがこれまでに東欧や中国など14か国の78の原発と、9か国の研究開発原発に対して核燃料を輸出している実績があるうえに、TVS-Kについてもフィンランドの原発ですでに使用されている点にも自信を持っている。RosatomのKirienko氏は「われわれは 徒手空拳で米国市場に参入しようとしているわけではない」と述べている。

 

 ただ、ウクライナ紛争を理由として米欧は、ロシアに対する経済制裁を実施、今月末の期限をさらに2017年1月末まで延長した。ロシア製核燃料は軍事物質でないとの判断で、その輸入は同制裁の対象外となる見込み。すでに欧州に輸出されている点もある。

 

 だが、米国自身がロシア経済制裁を発動中に、ロシア製の核燃料に国内市場を開放することは、対ロ制裁の実質効果を米国自身が減じるとの批判も出そうだ。また「アメリカ最優先」を唱える共和党のトランプ大統領候補が政権を担うと、「ロシアの核燃料」は淘汰されるリスクもある。

 

 Rosatomはこれまでのところ、米欧の経済制裁リストの対象にはなっていない。またすでに欧州市場への核燃料の輸出は続いている。ただ、仮に制裁対象になると、燃料・技術の輸出金融等を利用できなくなるリスクがある。

 

   いくつかの不確定要素はあるものの、Rosatomは米国核燃料市場で2020年までに10%の市場シェアを確保する計画だ。現在、グローバル核燃料市場では17%(ロシア国内を含め)のシェアを持つだけに、決して不可能な数字ではない。年間の核燃料輸出収入は10億㌦を超えているという。

 

http://www.rosatom.ru/en/press-centre/news/