HOME9.中国&アジア |中国の西部地区で開発した太陽光発電電力を、3200km以上離れた沿岸部都市へ超高圧直流幹線で世界最大の送電事業。独シーメンスとスイスABBが相次いで受注。日本企業はカヤの外(RIEF) |

中国の西部地区で開発した太陽光発電電力を、3200km以上離れた沿岸部都市へ超高圧直流幹線で世界最大の送電事業。独シーメンスとスイスABBが相次いで受注。日本企業はカヤの外(RIEF)

2016-07-25 14:01:34

 

中国を横断する超高圧直流幹線事業を、ドイツのシーメンスと、スイスのABBが相次いで受託した。中国最西部の新疆ウィグル自治区で太陽光で発電した直流電力を、東部の安徽省まで3200km以上をつなぐ世界最大の電力幹線事業となる。日本企業はカヤの外だ。

 

 同事業が世界最大なのは高圧直流の幹線として3000kmを超すという距離の長さだけではない。1100kVという巨大な整流器用変圧器を導入する。同変圧器の容量は587メガワットアンペア(MVA)と世界最大となる。電力線は2018年末に稼働の予定。

 

 太陽光発電による電力は直流。これを、そのまま中国東部の消費地近くまで長距離の超高圧直流幹線で一気に送電する。それを変圧器によって、家庭や企業が使用する交流電力に切り替えて使用することになる。直流幹線の場合、送電ロスが極めて少なくて済むメリットがある。しかし電力消費地では交流に変換しなければならない。

 

 シーメンスは中国の地元パートナー企業とともに、この超高圧直流幹線事業用の変圧器を供給する契約を中国の国営送電会社のState Grid Corporation of China (SGCC)と結んだ。

 

 UHVCキャプチャ

 

    ABBもシーメンスとほぼ同時期に、SGCCとの契約を明らかにした。ABBは1100kVの超高圧直流電力送電システムの一環として契約額を3億㌦以上を受託した、としている。

 

 1100kvの整流器型変圧器は新疆ウイグル自治区の昌吉市から広東省韻関市までの3284kmをつなぐ直流電力幹線の制御のために使用される。同電力幹線は12GWの電力を送電できる設計だ。現在、もっとも容量の大きい直流電力網より5割増の送電能力となる。

 

 シーメンスは受注した変圧器をドイツのニューレンベルグにある変圧器工場と、中国広州を拠点とする高圧直流幹線用変圧器工場との間で協力して製造する。同変圧器は直流で送電された電力を中国の国内送配電網の1050kVの交流グリッドに直接変換する役割を果たす。

 

 ABB は受注内容をより詳細に開示している。整流用変圧器のほか、整流器のバルブ、交流用のサーキットブレーカー、壁付け碍管、コンデンサー、さらにシステムデザインの支援なども含む。

 

シーメンスが開発した超高圧直流送電用の整流器用変圧器
シーメンスが開発した超高圧直流送電用の整流器用変圧器

 

 シーメンスが今回の受注に先駆けて開発した変圧器は、変圧器から約19mの長さの2本の碍管(bushing)が突き出た形となる。これは絶縁のためで、この分を含めると変圧器の大きさは、長さ37.8m、高さ5.85m、幅5.20m。絶縁油込の重量は823㌧。

 

 ABBの仕様もほぼ同様だが、長さ32m、重さ800㌧と開示されている。ABBは受注した変圧器を重慶の製造・テスト工場で製造するほか、地元のエンジニアリングと技術センターをプロジェクトの進行に合わせて活用する方針という。

 

 ABBのPower Grids部門の責任者のClaudio Facchin氏は「中国の電力需要地域は沿岸部を中心とした東側に集中し、エネルギー源は西部や北西部に集中する。これらを超高圧直流幹線でつなぐことで、超長距離の送電課題を解くことが可能になった」と技術進歩を強調している。

 

 ABBは2010年にSGCCとの間で、向家市と上海を結ぶ高圧直流線のプロジェクトを受注した経験がある(稼働は2014年)。その際の変圧器能力は800kVで、当時は世界最高の商業用システムとされた。

 

http://www.abb.com/cawp/seitp202/F0F2535BC7672244C1257FF50025264B.aspx

http://www.siemens.com/press/en/pressrelease/index.php?content[]=EM&content[]=EMMS&content[]=EMLP&content[]=EMTR&content[]=EMHP&content[]=EMTS&content[]=EMEA&content[]=EMSGE