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年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 環境・社会・ガバナンス(ESG)重視の投資実施に向け、ESG株価指数作成を公募。中長期投資で安定運用目指す(RIEF)

2016-07-22 14:17:00

ESGキャプチャ

 

 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、環境や企業統治を重視した企業を選別して資金を流すESG投資を実施するため、22日、新たにESG株価指数の作成の公募に踏み切った。年内にも指標を作成、できれば年度内にもESG投資を始める方針。

 

 米欧の年金等ではESG投資はすでに広がっているが、日本の年金等の機関投資家で、明確な方針を持っているところは極めて少ない。GPIFは昨年、国連責任投資原則(PRI)に署名、今回のESG投資の基盤整備もそうした活動の一環といえる。GPIFがESG投資を投資判断の中で明確に位置づけることで、他の年金基金等の追随も期待できる。

 

 GPIFは、「環境や社会の問題などネガティブな外部性を最小化することを通じ、ポートフォリオの長期的なリターンの最大化を目指すことは合理的」と位置づけ、ESG要素を投資に考慮することで期待されるリスク低減効果は、投資期間が長期であればあるほど、リスク調整後のリターンを改善する効果が期待される、としている。

 

 PRIが定めた6原則では、ESG要素を投資分析と投資判断のプロセスに統合することや、ESG要素を投資戦略や実践に統合するアクティブオーナーとして活動することなどをうたっている。ただ、そうしたESG要素を踏まえた投資を実施する場合、明確な基準が必要となる。「環境や社会に優しい」の謳い文句だけでは投資対象として選べない。

 

 そこで今回開発するESG株価指数の公募条件として以下の7項目を提示した。

 

 ①ESGの効果により、中長期的にリスク低減効果や超過収益の獲得が期待され、かつ過去のパフォーマンスやバックテストの結果の裏づけが概ねある

②ESGの一つまたは複数の要素に基づいて合理的な手法で企業を評価し、客観的に構成銘柄の選定されている

③構成銘柄は国内株

④指標構築ルールの公開

⑤パッシブ運用に必要な指標データが適切に開示されている

⑥特定銘柄への課題な偏りがない

⑦相当程度の投資可能なキャパシティを持つ

 

 さらに具体的な要素として、パリ協定や持続可能な開発目標(SDGs)などの持続可能な社会構築等を目的とした国際協調に資することや、地球温暖化、エネルギー効率化、水資源、生物多様性、女性の活躍、従業員の健康、取締役の構成、公正な競争、汚職等の要素を例示している。

 

 株価指数への応募は22日から9月30日とし、投資委員会が選考、その結果を運用委員会が審議して決定する。採用する指標は複数を選ぶ可能性があるとしている。海外ではカナダ年金計画投資委員会のように、公的年金が運用会社などと指数を作る例がある。

 

 GPIFは現行の仕組みでは直接、株式を買えないため、信託銀行などに委託してESG指数に採用された企業の株式を買うことになる。ESG運用を明確にすることは、国内外の投資家の理解も得やすく、安定した運用益を見込める。通常の日本株投資では、このところ相場の変動が激しく、GPIFも昨年度は5兆円台の運用損失を出している。

 

 短期の運用での値動きの激しさの一方で、長期の運用をESG投資中心に行なうことで、年金運用全体の利回りを安定的に向上させることができるとみられる。GPIFの運用資産は約140兆円。うち約30兆円が日本株。日本株を保有する最大規模の投資家だ。

https://www.unpri.org/about/the-six-principles

http://www.gpif.go.jp/topics/2016/pdf/0722_koubo.pdf