HOME11.CSR |増える大型バイオマス発電。だが発電燃料に大きな違い。大林組は山梨で「純粋国内木質バイオマス」発電所起工。太平洋セメントは岩手県でほぼ全量輸入燃料の大型発電所(RIEF) |

増える大型バイオマス発電。だが発電燃料に大きな違い。大林組は山梨で「純粋国内木質バイオマス」発電所起工。太平洋セメントは岩手県でほぼ全量輸入燃料の大型発電所(RIEF)

2016-08-04 14:12:28

oobayashiキャプチャ

 

  経済産業省が太陽光発電を抑制する中で、バイオマス発電が増えてきた。 大林組が、山梨県大月市でバイオマス発電所の起工式を行なったほか、太平洋セメントは岩手県大船渡市で大型事業に乗り出した。ただ、同じバイオマスでも大林は100%国内資源の「純粋バイオマス」だが、太平洋セメントは90%を海外のパームヤシ殻などに頼る輸入依存型で、大きな違いがある。

 

 大林組が、取り組むのは山梨県大月市で、地元の間伐材などを燃料に使い、14MWの発電能力(約3万世帯分)の電力を作り売電する。投資総額は約100億円で固定価格買い取り制度(FIT)による売電収入を年間20億円と見込んでいる。2018年8月に商業運転開始の予定。

 

 同事業が注目されるのは、14MWという大型設備である一方で、年間約15万㌧と見込む燃料のうち、20%は地元の未利用間伐材や一般木材とし、残りの約80%は東京や神奈川など半径50km圏内から、街路樹などの剪定で発生する剪定枝を集めて使うという点だ。街の緑化と連携した形で、かつ海外燃料を一切使わない自給型の木質バイオマス発電になる。CSRとしての評価も出来る。

ohbayashiキャプチャ

 また地元での雇用も約40人を予定している。事業は同グループの大林クリーンエネジー社が事業主となるが、発電所の建設工事は、プラント設備を含めたEPC契約により大林組が一括して請け負う。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 一方の太平洋セメントのバイオマス発電所は、大船渡市にある同社の大船渡工場内に設立する。事業はイーレックスとの共同事業となる。発電能力は大林組の設備の5倍強の能力を持つ75MW(約11万世帯分)という国内最大規模。投資額も235億円にのぼる。

 

 今年度に着工し、発電開始は2019年秋の予定。FITによって全量を売電する予定。同事業の特徴は、バイオマス燃料をすべて海外から輸入する点にある。パーム椰子殻(PKS)とパーム油搾油後に廃棄されていたパーム空果房(EFB)を混焼し、それに高熱を維持するため石炭を加えるという。PKS+EFBと石炭の比率は、9対1になる。

 

太平洋セメントは、同発電所により、「年間28万5000㌧のCO2排出削減に貢献する」と説明しているが、燃焼する約1割の石炭からのCO2排出量や、PKS等を日本に輸入する際のCO2排出量等を差し引いているのかどうかは不明。

 

pksキャプチャ

 

 PKSやEFBは日本のサラヤや、タイ、マレーシアの現地企業と協同で発電燃料化したもので、違法伐採等の問題はないと思われる。ただ、再生可能エネ燃料とはいえ、燃料をほぼ海外に依存する場合は、市況の変化や輸出国の国内事情等へ供給が不安定になるリスクを抱えることにもなる。

 

 太陽光発電や風力発電は自然条件によって、発電量が左右されるが、バイオマス発電は燃料さえ確保できれば、24時間操業が可能で、稼動後の経済効率は高い。しかし、一部とはいえ石炭を混焼させるほか、海外燃料依存度が高い場合は、現地でのESG問題との調整も必要になってくる。

 

 大林組と太平洋セメントの2つのバイオマス発電を比べると、多くの消費者は前者の発電電力を好ましいと思うのではないだろうか。

 

http://www.obayashi.co.jp/press/news20150608_01

http://www.taiheiyo-cement.co.jp/news/news/pdf/160729.pdf