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電力自由化を“妨害”する東電グループ。新電力顧客の電力料金データ通知遅れ問題で、複数の新電力から損失補償の請求。政府の監視委員会は機能せず(各紙)

2016-08-23 22:20:38

denryokuキャプチャ

 

 東京電力グループの送配電事業者の東京電力パワーグリッド(PG)は23日、電力自由化に伴い東電から新電力に切り替えた顧客向けの電力料金データを通知できない問題で、複数の新電力から損失の補償を請求されたと明らかにした。

 

 自由化から5か月が経過しても、事態を改善できない東電PGの対応に対して、自由化の趣旨を無視し、結果的に親会社の東電を利する対応になっている、との見方も広がっている。

 

 本来はこうしたトラブルを防止し、公平な競争条件を確保するために政府機関の電力・ガス取引監視等委員会が設立されている。同委員会は東電PGに対して事態の是正の勧告を出している。これに対して同社は22日、改善計画の検証報告を行ったが、基本は事態を改善するための要員の不足という。

 

 東電PGは、電力の使用を東電から新電力に切り替えた顧客分の電力使用量データについても、スマートメーターで収集して新電力に通知する責任がある。だが現在でも、システム不具合でデータ通知の遅れが約1万9000件、ピーク電力の内訳データの通知不備が3万5000件と、合計で5万4000件の不備が続いている。

 

 このうち3000件以上はそもそも月間でいくら電気を使用したかも把握できていないという。顧客も料金的に有利なはずの新電力に切り替えたことで、電気料金をいくら払えばいいか分からないことが続いていることで、不安な状態となっている。

 

 影響を受けている新電力各社は顧客に対して、前年同月の使用量などを元に料金請求できないか打診している。その場合も、追加計算のための人件費や追加請求書の郵送費などの経費が発生する。今回、複数の新電力がこうした費用の補償を東電PGへ請求したという。

 

 東京ガスなど大手の新電力は、これまで東電PGに正式な補償請求はしていなかった。だが、東電側の改善対策が一向に進まないことから、損失補償の協議を始めるところも増えてきた。東ガス、東京急行電鉄系の東急パワーサプライ(東京・世田谷)もそうした動きに入っているという。

 

 東電PGだけではない。家庭に設置している太陽光発電設備から電気を買い取る東京電力エネジーパートナー(EP)も、買い取った価格の支払いの一部が遅滞している、と発表した。東電グループ全体が、顧客を軽視した取引対応をしているとしか言えない状況が続いている。

 

 公平な競争と公正な顧客対応を監視する役割を担う電力・ガス取引監視等委員会も、事態是正の勧告はしたものの、それ以上の対応がとれていない。法的には、今回のような問題が生じた場合、あっせん・仲裁などを委員会の判断でできるほか、取引ルールが阻害されていると判断する場合は、経済産業大臣に建議する権限も有しているのだが。

 

http://www.tepco.co.jp/pg/company/press-information/press/2016/1318901_8622.html